日本糖尿病協会

日糖協について

糖尿病と合併症リスクに関する認知度実態調査(2008年)

Last Update:2016年5月17日

~糖尿病患者さんの7割が虚血性心疾患について認知。
しかし、 「虚血発作時の症状が感じにくい」ことを知っている糖尿病患者さんは4人に1人~

ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社(代表取締役社長:モーリック・ナナバティ、本社:東京都新宿区、以下ボストン・サイエンティフィック ジャパン)と社団法人日本糖尿病協会(理事長:清野 裕、所在:東京都千代田区、以下日本糖尿病協会)は、2008年5月~6月[O1]にかけて、日本糖尿病協会に所属する40歳以上の糖尿病患者さん男女を対象に「糖尿病と合併症リスクに関する認知度実態調査」[O2]を郵送にて実施し、680名から回答を得ました。糖尿病患者さんに合併症、特に[O3]虚血性心疾患のリスクについて知っていただくため、11月14日の「世界糖尿病デー」を機会に本調査の結果について下記のとおり発表致します。

[主な調査結果]

命に関わる「虚血性心疾患」の認知は三大合併症より低い

糖尿病は合併症の病気とも呼ばれ、さまざまな合併症を引き起こすことで知られています。その中でも「網膜症」、「腎症」、「神経症」などの「3大合併症」の認知度は、87%~92%と約9割でした。一方、「虚血性心疾患」や「脳梗塞」などの生命へのリスクが高い合併症の認知度は7割程度にとどまりました。(図1)

図1 合併症の認知と罹患

「虚血発作時の症状が感じにくい」と知っている糖尿病患者さんは4人に1人

合併症としてではなく、疾患としての「虚血性心疾患」の認知については、95%の糖尿病患者さんが何らかの形で知っていると答えました。しかし、病気を「詳しく知っている」と答えた人はわずか7%にとどまり、病名は知っているものの、詳しい病態や症状については漠然とした知識しか持っていないことが明らかになりました。

また、糖尿病患者さんは、虚血発作が起こったとき非糖尿病患者さんに比べて胸の痛みなどの症状を感じにくくなる例もあり、発見が遅れるケースがありますが、その事実については、64%の糖尿病患者さんが知らないと回答しています。さらに、糖尿病患者さんの突然死の原因として、虚血性心疾患が最も多いという事実について理解している人は半分に留まりました。 (図2)

図2 虚血性心疾患の認知内容

経皮的冠動脈形成術(PCI)について知っている糖尿病患者さんは38%

糖尿病患者さんが虚血性心疾患を合併した場合、非糖尿病患者さんに比べて、複雑症例であることが多く、治療が困難なケースが多いとされています。慢性期の治療には、薬物療法、冠動脈バイパス術(CABG)、経皮的冠動脈形成術(PCI)などの選択肢がありますが、それぞれの治療法にはリスクとベネフィットがあります。

本調査の対象者では、「冠動脈バイパス術(CABG)」を知っている人は56%、硝酸薬、抗血小板薬、抗凝固薬、スタチン製剤などを含む「薬物治療」を知っている人は52%と、それぞれ約半数でした。そして、現在の日本で最も多く適応されている治療法である「経皮的冠動脈形成術(PCI)」について知っている人は38%と、3人に1人でした。

虚血性心疾患の治療でどの方法がもっとも有効なのかは、専門医師による慎重な診断が必要です。それと同時に、虚血性心疾患を合併した糖尿病患者さん自身が病状を把握し、それぞれの治療選択肢を理解したうえで治療を受けていくことが、非常に重要になってきています。

この調査結果について、日本糖尿病協会 理事長で、関西電力病院 院長の清野裕先生は、次のように述べています。

「本調査は、糖尿病患者さんの虚血性心疾患に対する認知度を理解するために実施しました。合併症としての虚血性心疾患の認知が約7割というのは予想より高い数値のように思います。これは今回の調査対象が普段から意識の高い協会会員の皆さんに限定していることが原因だと考えます。そうすると、一般の糖尿病患者さんにおける実際の認知度はもっと低いのではないかと推察できます。また、糖尿病の専門医としては合併症を知るだけではなく、初期の血糖コントロールや、血圧、血中脂質などの危険因子を一つでも減らすことが動脈硬化を防止するために重要であることを強調していきたいと思います。また、情報源は「医師」または「日本糖尿病協会」からという回答が多かったのですが、これは我々の活動が患者さんの知識習得に役立っていることを示唆しており、その活動の意義を再認識しています。今後ますます患者さんへの啓発活動を強化していきたいと思います。」

また、小倉記念病院循環器科部長である横井宏佳先生は、循環器内科医の立場から次のようにコメントしています。

「虚血性心疾患は命に関わる合併症にもかかわらず、他の合併症と比べて認知度が低いことがわかりました。虚血性心疾患を合併した糖尿病患者さんの中には、糖尿病ではない患者さんに比べて症状を感じにくい方もいるため、発見されたときは重症化しており、治療が困難なことがあります。本調査でも虚血性心疾患の罹患率は低い数値でしたが、これは患者さんや医師が症状やサインを見過ごしているということも考えられます。また、こうした、複雑病変を有する患者さんの治療には、長期的予後から冠動脈バイパス術(CABG)が優位だといわれていましたが、近年、薬剤溶出型ステントなど新しい技術の登場で、経皮的冠動脈形成術(PCI)治療が有効的な選択肢として注目されています。我々循環器内科医は、糖尿病専門医と連携し、早期に患者さんの虚血性心疾患を発見すると共に、それぞれの患者さんに見合った最適な治療法を選択することが重要であると考えています。」

  

本調査は、日本糖尿病協会の協力のもと、ボストン・サイエンティフィック ジャパンが実施しました。ボストン・サイエンティフィック ジャパンはより多くの糖尿病患者さんに、糖尿病が虚血性心疾患の大きなリスクファクターであることを知っていただくため、今後も継続して啓発活動に努めてまいります。

[参考資料]

調査の概要

調査方法
郵送調査
調査期間
2008年5月~6月末日
調査対象
40歳以上の日本糖尿病協会の本部会員および糖尿病患者(男性396人、女性280人、無回答4人)
有効回答数
680件

関連用語の解説

社団法人 日本糖尿病協会について

糖尿病に関する正しい知識の普及啓発、 患者及びその家族への教育指導、国民の糖尿病の予防、健康増進への調査研究を行うことを目的に、1961年(昭和36年)に結成されました。日本糖尿病協会には、糖尿病患者さんとその家族、医師、看護師、栄養士、薬剤師、糖尿病療養指導士などの医療スタッフで作られた約1,600の糖尿病「友の会」があります。

ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社について

ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社は、米国マサチューセッツ州に本社を置く、ボストン・サイエンティフィックコーポレーションの日本法人です。ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社は、1979年、米国におけるボストン・サイエンティフィックコーポレーションの創立(日本では1987年のボストン・サイエンティフィック株式会社創立)以来、インターベンション(低侵襲治療)に用いる最先端技術を駆使した医療機器の世界的リーディングカンパニーとして、患者さんのQuality of Life(生活の質)向上のための数々の製品を通じ、世界的にインターベンションの普及に貢献しています。ボストン・サイエンティフィック ジャパンおよびボストン・サイエンティフィックコーポレーションは糖尿病患者さんのサポートとして、国際糖尿病連合が推進する「世界糖尿病デー」のオフィシャルスポンサーを努めるなど日本国内のみならず世界に向けた啓発を実施しています。

  

ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社
 TEL:03-3343-9411 FAX:03-3343-0264

   

社団法人日本糖尿病協会事務局
 TEL:03(3514)1721 FAX:03(3514)1725

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