日本糖尿病協会

患者さんへ

インスリンQ&A シニア版

Last Update:2017年1月12日

糖尿病治療でインスリン注射を行っている皆さんの様々な疑問にお答えします
【インスリン自己注射ガイド】
【インスリン製剤一覧(2016年改訂版)】

【1】 インスリンについて

インスリン長期治療による副作用はありますか?
 現在使用されているインスリン製剤は、人のインスリンと同じ構造のものと、少し異なったものがありますが、長期間使用しても大きな副作用はないと言われています。
長期間注射を続けることによって、注射部位の皮膚が硬くなったり、まれにインスリン製剤によってアレルギーが起こることがあります。注射部位の皮膚が硬くなったり、膨らんだり、また赤くなったりした場合は、かならず主治医にお知らせください。
インスリンと飲み薬ではどちらの副作用が大きいですか?
 インスリンと飲み薬の副作用を一概に比較することは出来ません。低血糖という副作用は、インスリン治療の方が起こりやすいと考えられますが、最近多く使用されているインスリン製剤の中には比較的低血糖が起こりにくいものもあります。一方、飲み薬には、薬の種類によってそれぞれ起こりやすい副作用があります。ちょっとでも心配なことがありましたら主治医や薬局でご相談ください。
インスリンと飲み薬ではどちらが費用がかかりますか?
 使用するインスリン製剤の種類と量や、飲み薬の種類によって費用は変わりますが、一般的に、インスリン治療の方が費用は高くなります。
入院中の処方と外来での処方でも、また院内処方と院外処方によっても違いますが、インスリン治療の場合、「在宅自己注射指導管理料」や「注入器加算」、「注入器用注射針加算」が、血糖自己測定をしている場合には、「血糖自己測定器加算」が算定されますので、費用が高くなります。
体調不良により食欲不振に陥った場合のインスリン注入量の調節はどうしたらよいですか?また絶食の場合注入はなしで良いですか?
 体調が悪い時(これをシックデイといいます)のインスリン注射については、糖尿病のタイプ(1型・2型)や体調の悪さの症状によって異なりますので、主治医に是非、ご相談ください。
一般的には、体調が悪い時でも、基礎インスリン(持効型溶解インスリン製剤)は普段と同じ量を注射します。食事の前に注射するインスリン(超速効型・速効型インスリン製剤)は、食事がある程度口に入れば、普段の半分の量を注射しますが、注射する前には血糖値を確認してください。また、発熱がある場合などは、普段より血糖値が高くなっていることがよくあります。どうしてよいか、不安になったら、主治医に診てもらいましょう。
外食時のインスリン注射に悩んでいます。食事直前に打つように指示されていますので、配膳されてから打つようにしています。食堂が空いているときは何とかできますが、混雑しているときは、他人に不快な思いをさせたら悪いと思い、注射なしで済ますこともあります。1型糖尿病の患者さんは大変だろうと思います。
 他人に不快な思いをさせることなく、注射するにはどうしたらいいかな、と一度、考えてみましょう。
皆で食事するとき、誰かがトイレに立った等はあなた自身も不快に思いませんね。それはよくあることだからです。また、食事中お隣の方がどの皿から箸を付け始めたか等も、だれも知りません。というくらい、他人はあなたのことを気にとめていないことがわかります。
さっと当たり前のように注射してみませんか。そのためには、まえもってセットしておくのもいいでしょう。注射場所もめだたないところで十分ですね。
20年ほど血糖降下薬を服用してきました。その間、1日に何回もインスリン注射が必要になるような事態は避けたいと思ってきましたが、遂にそれが現実のものとなってしまいました。治療薬として経口薬よりインスリン注射の方が優れているのはどのようなところにありますか。
 2型糖尿病の場合でも、発病してから時間が経つにつれて、すい臓で作られるインスリンの量が減ってくるということがすでに言われています。減りすぎてくると、飲み薬でまかないきれなくなります。このときインスリン治療が必要になります。インスリン治療は、自分のすい臓から分泌されるインスリンを外から補充するものですから、すい臓からのインスリンが減っていても確実に血糖値を下げることが出来ます。
インスリン製剤は何種類もありますし、患者の身体的条件や病状も多様であるばかりか、食事の内容や量もさまざまです。さらにそれぞれの患者は、高齢者といえども、運動量の異なる仕事をしています。このような条件の下で、注射すべきインスリンの種類あるいはタイプと量(あるいはそれぞれの組合せ)が、患者の身長、体重、年齢とか、運動の量や質などとどのように関係するのか教えてください。病状との関係を考慮に入れると上の関係はどのようになるのでしょうか。
 人のインスリンの分泌には二つのパターンがあり、それぞれに役割が違います。一つは、一日中少しずつ分泌されているインスリンで、基礎分泌と呼びます。基礎分泌は肝臓からブドウ糖が血液中に出てくるのを抑える役割をしていて、私たちが食事をしていない時間帯や、眠っている間にも必要なインスリンです。
もう一つは、食事をして血糖値が上がっている時に分泌されるインスリンで、これを追加分泌と呼びます。食事をした後に血液中に増えるブドウ糖を筋肉などに取り込むのを助けて、血糖値を下げる役割をしています。
現在使用されているインスリン製剤は、基礎分泌を補うための長時間作用型インスリン製剤(持効型溶解インスリンや中間型インスリン)と、追加分泌を補うための短時間作用型のンスリン製剤(超速効型インスリン、速効型インスリン)があり、それぞれの役割に応じて使用されます。
インスリンの必要量は、それぞれの人のすい臓から分泌されるインスリンの量によって異なります。また、体重が多ければ必要なインスリン量も多くなります。運動時には、血糖値が下がってくることがありますので、インスリン注射の量を調節する必要があります。
注射されたインスリンの1単位当たりの効果は、一般に、加齢とともに小さくなっていくと考えていいですか。
 加齢とともにインスリンの効果が弱くなることもありますが、体重の変化や血糖コントロールの状態にも影響されますので、少量のインスリンで治療している方では必ずしも一般的な傾向とは言えません。しかし、1型糖尿病の方や2型糖尿病でもしっかりと4回注射している方では、この傾向はあります。ただし、この傾向がご自分でわかる方は若い時代から高齢になるまでインスリン治療している方です。
食前のインスリン注射が、何らかの理由によってできなかったり、それを忘れてしまうことがあります。注射ができるようになったとき、あるいは思い出したとき、基本的にはどのようにすればいいのでしょうか。たとえばその食事が通常の内容と量に近いものであったとして、食事したはずの時間から何時間経過していれば何単位くらい減らして注射すればいいのでしょうか。あるいは次に予定されている食事が何時間後ならば、その食事の時を待っていることでいいのでしょうか。
 この質問は、とても個人的な要素が多く含まれているので、「何単位減らしたらよい」と数字で表すことは、なかなかできません。このような質問こそ、主治医の先生としっかりご相談する質問です。是非、今度の外来で、お聞きしてください。
 インスリン注射の単位数というのは、それくらい個人的ないろいろな要素を加味して決めているのが実情です。皆さんとの付き合いが長いほど、皆さんの食生活や活動状況を把握しているのが主治医です。上記のような質問を是非、なさってください。
アルコールが栄養素ではなく、インスリン抵抗性を大きくすることは知っていますが、これらを除けば、飲酒が糖尿病そのものやインスリンによる治療にどのように関係するのか、私には判然といたしません。(そのことを私がはっきりと聞いたり、読んだりすることを避けてきたのでしょう)。私はさほど大酒するわけではありませんが、長い間愛してきたボルドーの赤、普通のボトル1本(750cc, アルコール13%前後)を、近頃では二日に分けて楽しむなどという情けないことをやっています。いかがなものでしょうか。
 アルコールはおめでたいとき、悲しいとき、うれしいときなど、昔から私たちの生活を豊かにするという一面を持っており、言わば人間の営みの親友のようなものです。。 糖尿病があるからアルコールはだめ、ということではなく、私たちは大昔からの親友とこれからも親友付き合いをしていくのが一番です。そのためには、アルコールに飲まれないこと。親友との付き合いも、親友だからといってお金を貸してくれ、あれをしてくれ、これをしてくれ、という態度で付き合っていたら、親友はいなくなってしまいます。
 アルコールに飲まれずに、これからも大事な親友、伴侶として、付き合っていくことが大切です。アルコールとの付き合い方についても、是非積極的に主治医に相談してみて下さい。
A1cはインスリン依存型と非依存型でも目標値は一緒なのでしょうか?
 1型糖尿病(インスリン依存型)と2型糖尿病(インスリン非依存型)では、基本的には目標値は変わりません。しかし、年齢や合併症の程度を考慮して、それぞれの人の目標値を決めるのが望ましいと考えられます。
インスリンを注射していてもインスリン依存型の糖尿病ではない人もいると聞きましたがどういう事なのでしょうか?
 1型糖尿病(ほとんどはインスリン依存型です)では、自分のすい臓で作られるインスリンが非常に少なく、ほとんど枯渇した状態ですから、必ずインスリン治療が必要になります。2型糖尿病の場合には、全員が必ずしもインスリン注射は必要ではありませんが、インスリン分泌が減ってしまった人も多く、不足の程度に応じてインスリン注射が必要になります。
他の病気になって入院した時のインスリンの量などはどのように決めるのでしょうか?
 他の病気によって入院し、血糖値が変動している場合や、手術を行う場合などは、血糖値を測定しながら必要なインスリン量を決めるのが一般的です。病気の種類によって、また病気の程度によって、様々です。

【2】 高齢者と糖尿病

高齢者が介護施設に入所後、手が震えるなどで自分で注射ができなくなった場合、職員に手伝ってもらうことができますか
 介護施設にナースの方がおられれば、問題なくお願いできます。ご本人以外には、資格を有する方と家族だけが注射をすることができます。
一人暮らしの高齢者です。インスリン注射への移行を勧められていますが、それを、毎日確実に実行できるかどうか不安です。どのようにすればいいでしょうか。
 現在のインスリン製剤は、ペン型インスリン注入器が主流になっていて、注射器(デバイスと呼びます)も使いやすいものになっていますので、高齢者でインスリン注射をしている人はたくさんいます。ただし、視力が悪い場合や、記憶力が低下している場合などは、インスリン注射が出来ない場合もありますので、医療機関でよくご相談ください。近所にサポートしてくれるご家族がいる場合は、一緒にインスリン注射の指導を受けてもらうことが望ましいでしょう。
歳をとる事によってインスリンの量が減る事はありますか?
 歳をとるとともに食事の量が減ったり体重が減ることがありますので、この場合にはインスリン注射の量は減ってきます。
インスリン注射を打ったかどうか、よく忘れるのですが、食後どうすれば良いでしょうか?
 いろいろ、ご自分なりの工夫をしてみましょう。一つは、使い終わった針とか針ケースのシール(裏にノリがすこし付いています)を捨てないで食卓の横に置く(貼る)、二つにはペン型インスリン注入器自体を食卓にいつも置いておく(箸入れでもあれば一緒に立てておく)、つまり自分の部屋とかカバンから持ち出さずに「食卓用のペン」としていつも食卓に置いておく。このような工夫でも忘れることを少なくすることができます。患者さん毎、様々な工夫をされておられますので、お知り合いの患者さんとお話しされても良いでしょう。
経口薬を飲んだかどうか、よく忘れるのですが、どうすれば良いでしょうか?
 飲んだかどうかわからない場合には、追加で服用することは危険ですのでしないでください。
インスリンは打ったのですが、食事をとったかどうか忘れてしまうことがあります、その場合どのようにすれば良いでしょうか?
 ご家族からの質問だとして、以下に書きます。食べたあとの食器やら、食べ残しやら、包装紙などがあれば、他人でも判断できることがありますが、何度も繰り返すとなれば、主治医にご相談してください。

【3】 糖尿病全般

猛暑日の運動について、普段は朝食1時間後の8時頃に散歩していますが、今では気温も上昇し、熱中症が怖くて散歩ができません。血糖コントロールを考えると、どちらがよいか迷っています。
 猛暑の日には発汗量が多く体への負担も大きくなりますので、脱水にならないための水分補給をはじめ、熱中症を予防する対策が必要です。血糖値が高い時には脱水になりやすいため、運動は勧められません。年齢や、合併症、血糖コントロールの状態にもよりますが、猛暑の時間帯に屋外で運動することは避けて、気温の下がった時間帯や、屋内での運動をお勧めします。
「何を食べてもいいが、バランスよく」と言われます。年を取るにしたがって運動量は減少し、それに応じて必要なカロリーも減少するのが通常の場合だと思われます。このとき「適切なバランス」も変化するのでしょうか。そしてこのことが注射されるインスリンの「適切なタイプ」を変化させるでしょうか。もっとも年とともに合併症などの病気の発症やそれらの悪化の確率も高くなると考えられ、それらを考慮に入れれば話は極めて複雑になってしまうと思われますが、簡単に取りまとめて下さることができるでしょうか。
 これも、とても個人的な話となりますので、お一人お一人に対応していかなければならないことですね。質問も長くなるように、お答えも長くなります。是非、主治医にご相談ください。
最近は年配の1型糖尿病の患者さんが増えているようですが、どうしてなのでしょうか?
 原因はわかりませんが、これまでは2型糖尿病と診断されていたのかもしれません。診断する検査がしっかりしたために1型糖尿病と診断されるだけかもしれません。あと、成人発症1型糖尿病の方もだんだん高齢になってきたこともあるでしょう。
1型と2型の区別は、どのようにしてつけられるのでしょうか?私にも理解できるようにお願いいたします。
 大まかに言いますと、糖尿病の成り立ちが異なります。その結果、ご自分の膵臓から分泌されるインスリンが最初から生きていく上で絶対的不足になったのが1型糖尿病です。
どんな症状が糖尿病の入り口の症状なのでしょうか?
 糖尿病は自覚症状が出にくい病気ですので、症状がないうちに健康診断などで見つかる人が多いのです。血糖値が高くなると、のどが渇き、水をよく飲むようになり、尿が多くなります(多飲・多尿・口渇と呼ばれ、糖尿病の典型的な3つの症状です)。更に血糖値が高くなると、体がだるくなり、食べているのに体重が減ってきます。糖尿病に気づかずに長い間放置していた場合には、視力が落ちたり(網膜症)、むくみが出たり(腎症)することがあります。
飲み薬による低血糖症状の時もインスリンを打っている人と同じようにジュースを飲んだりブドウ糖や飴を食べてもよろしいのですか?
 低血糖に対する処置は、飲み薬でもインスリン治療の場合でも同じです。
緩徐1型糖尿病(SPIDDM)と言われましたが、インスリン注射をし続けなければならないのでしょうか?
 緩徐進行型1型糖尿病の場合でも、インスリン注射を続けることが必要です。
SPIDDMでも1型糖尿病でも、最近のインクレチン関連薬は使えないのでしょうか?
 現在、1型糖尿病に対してインクレチン関連薬を使用することは、保険診療では承認されていません。
1型糖尿病では、GLP-1受容体作動薬も使えないのでしょうか?
 現在、1型糖尿病に対してインクレチン関連薬を使用することは、保険診療では承認されていません。
病院で、GAD抗体や、尿中CPRの検査をしたのですが、何のためにするのでしょうか?
 GAD抗体は1型糖尿病を診断するために測定します。尿中CPRはインスリンの分泌能力を調べる検査ですが、これも1型糖尿病の診断に必要な検査です。
病院で、eGFR HOMA-Rを測定しますと言われましたが、何の検査でしょうか?
 eGFR(推算糸球体濾過値)は腎臓の機能を知るための検査です。HOMA-Rはインスリン抵抗性の指標で、インスリンの効きやすさを調べる検査です。
HbA1Cは良いのですが血糖が安定しませんので、1.5AGを測りますと言われましたが、何の検査でしょうか?
 1.5AGはHbA1cと同じく血糖のコントロール状態を知るための検査ですが、より最近(過去数日間)の血糖値の状態を知ることが出来ます。

【4】 低血糖

低血糖についてお尋ねします。現在目がかすんだり、足がだるくなったり、急に空腹感を覚えたりして自覚症状がありますが、将来無自覚症状に発展する可能性がありますか?
 無自覚低血糖に発展するかどうか、はこれだけではなんともいえません。今はしっかり自覚症状が出ておられますので、これからもご自分のいろいろな症状を、どんな症状でもいいので、覚えていてください。
低血糖気味になってそのまま放置していたら、必ず低血糖に進展しますか?リバウンドの可能性はありますか?
 リバウンドの可能性はあります。しかし、神経障害が重症であったり、心臓に障害があったり、肝臓に障害があったり、とてもやせが強い方、などでは、リバウンドに期待できないことにもなりえます。低血糖にもしなったら、どうしてなってしまったのか、よく分析して、今度はならないように、といたしましょう。
夜中に目が覚めて、低血糖の症状に驚くことがあります。それを防止するいい方法がありますか。私は就寝前に血糖値をはかり、朝まで低血糖にならないように、過去の経験に基づいて、何単位かの補食を行うというような方法をとっていますが、いかがでしょうか。
 補食の内容にもよりますし、使用しているインスリンの種類にもよります。ぜひ、主治医に、ご相談ください。
低血糖症状(震えなど)が出ても血糖値が高い場合は、甘い物は食べないほうが宜しいのでしょうか?
 震えが来るときは、たぶん急降下で血糖が下がったと思われます。落ち着けないならすこしだけに甘いものをとりましょう。
コントロールに関係なく低血糖の数値は設定して宜しいのでしょうか?
 これもお一人お一人に向き合って考えていく問題ですね。ぜひ、主治医とご相談ください。
年齢を重ねますと、朝早く目覚めます。以前は、朝食前の運動は低血糖を引き起こす可能性があるので、食後にして下さいと言われましたが、いかがでしょうか?
 食後に、ゆったりと運動をしましょう。低血糖になるかな、なるかなと思って運動するよりは良いと考えられます。
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