1型糖尿病の方がマラソンをするときの注意事項
“自己管理”を行っていれば、どんなスポーツも可能ですが、逆に自己管理ができていない状態でのフルマラソンは危険です。日ごろからの充分なトレーニングと血糖管理をおこなっておきましょう。
以下に注意事項を記載します。
注意事項
- 進行中の合併症がないこと。
- 低血糖の自覚症状がわかり、自分で対処できること。
- 心臓疾患のないこと。(主治医に確認をしてください。)
- 日ごろから充分なトレーニングを行っていること。
- 体調が優れない時は無理をしないこと。
※ 著しい高血糖または尿ケトンを認める時は運動禁忌です。
トレーニング計画
これまで運動習慣のない人は、ウォーキングから始めましょう。30分位歩いても大丈夫であれば、少しずつスピードを早くしてジョギング程度の速さにしてみましょう。
5kmくらいを続けて走れるようになれば、少しずつ距離をのばしてみましょう。
少なくとも週に2回~3回、時間があるときはもう少し長い距離(10km程度)を走ってみましょう。本番までに、ハーフ(20km)くらいは走りきれるようにしておきましょう。そこまでに少なくとも6ヶ月くらいの準備期間が必要です。
フルマラソンを楽しむためには1ヶ月に計100kmくらいの距離を走りましょう。
補食による調整
運動前に血糖値を測りましょう。200mg/dl以上なら補食なし、以下なら糖質を2単位程度補食しましょう。長い時間運動を続ける時は、30分~1時間毎に血糖値を測ってどの程度の運動で、どれくらい血糖が下がるかを確認してください。血糖が下がるスピードは、その時の運動量、時間、インスリンの種類や量、食事によって変わります。いろいろな状況下で自分の状態を確かめておくことが大切です。経験することで、自分で調整ができるようになってきます。
長時間運動する際は、低血糖予防のために30分毎に糖質(あめ、ゼリー、スポーツドリンク)と水分の補給を行いましょう。運動の時間帯は、一般的には空腹時やインスリンが最も効いている時間帯の運動は、低血糖をきたしやすいので注意しましょう。ただし早朝、インスリンの効果が低下している時間帯であれば血糖値が上がりやすい時間帯なので補食の必要はない場合もあります。血糖値を確認して必要に応じて炭水化物の補食をしましょう。
インスリンによる調整
食後に運動をする場合、食事前の速効型または超速効型インスリンは10~20%減らしましょう。中間型または持効型インスリンが効いている時間帯であればそれらのインスリンも10%程度減らしましょう。長時間の運動は、夜間の血糖値も下げますので、就寝前のインスリンも10%程度減らしましょう。
フルマラソンを走る時:ホノルルマラソンの場合
マラソンのスタートは早朝5時です。少なくとも3時間前には食事を済ませましょう。その際、できるだけ炭水化物(おにぎり、バナナ、パンなど)をいつもより多めにとりましょう。(超)速効型インスリンは同じか20%くらい減量し、いつもより少し血糖を高めにしておくほうが安全です。前夜または深夜に中間型か持効型を使用すると思いますが、その際はいつもより40~50%減らしましょう。長時間の運動でインスリンの効きが大変よくなり、低血糖の回復が遅れるのを防ぐためです。
スタート後は、トレーニングでの経験を生かしましょう。30分~1時間毎に糖質と水分の補給をしましょう。実際、5km以降は3km毎にエイドステーションがあり、アミノバリューがありますので、少しずつ(50~100cc)補給しましょう。自分に合う補食を少しずつ補給するのも良いと思います。私の場合は、ゼリー(180ccで180kcal:ヴィダーインか大塚のカロリーメイトゼリー)をウェストポーチに入れておきそれを30分~1時間ごとに半分くらい食べます(計3~4個)。すべてのエイドステーションで、水とアミノバリューを2~3口ずつ含み、不安な時は血糖値を測ります。低血糖気味のときは、ブドウ糖のゼリーか黒砂糖を食べます。
基礎インスリンが効いていれば、途中でインスリンの追加は必要ありませんが、血糖値が350~400mg/dLをこえるような高血糖なら速効型を2~4単位追加する必要があります。汗をたくさんかく場合は、塩分の補給も必要なので、梅干を1~2個食べると良いでしょう。
実際フルマラソンを走ると、50~60kgの人なら約2000~3000kcalを消費します。よほど早く完走できる場合を除いては、マラソン中の補食として500~1000kcalは必要です。
完走後も糖質を少し多めに取りましょう。その日の夜間も低血糖が起こりやすいため、(運動後遅発性低血糖)中間型または持効型は10%程度減らし、必ず寝る前に血糖を測って必要なら補食を取っておきましょう。
インスリンの注射部位
マラソンで足や臀部の筋肉を使うため、これらの部分に注射すると早く効くことがあります。マラソン前のインスリンは腹部にするのが良いでしょう。
南 昌江