日本糖尿病協会

患者さんへ

インスリンQ&A

Last Update:2022年10月4日

糖尿病治療でインスリン治療を行っている皆さんの様々な疑問にお答えします

インスリン治療に関する資料

インスリン自己注射ガイド
インスリン製剤・GLP-1受容体作動薬一覧(2022年改訂版)

インスリンポンプってなあに?~インスリンポンプ使用中の注意点~
 ★インスリンポンプ療法を保育園や小学校の先生に説明する資料です。

ミニメド620Gインスリンポンプ航空機搭乗時等の注意(日本メドトロニック株式会社)

【1】 インスリン治療全般について

インスリン治療を始めると医療費はどのくらいかかりますか?
 あるインターネットアンケート調査による報告ですと、インスリン療法を行なっている人のほぼ半数が1万円~1万5千円未満とのことで、1万5千円以上負担している方も5人に1人強とのことです。もともと医療費は、使用しているインスリンの種類や、注射量により個人差があります。そしてインスリン治療とともに血糖自己測定も始まることが多いので、その費用も別途かかります。また、18歳までに診断された場合、住所が変更なければ20歳までは国の小児慢性特定疾患治療研究事業でカバーされますので、医療費の一部だけ支払うことになります。
インスリン治療を始めると、ずっと続けないといけないと聞きますが、本当ですか?
 1型糖尿病は、膵臓のインスリン産生細胞(β細胞)が自己免疫という機序によって破壊され、インスリンの産生が完全に停止または、ほとんど産生されなくなるので、体は絶対的なインスリン不足に陥ってしまうのです。インスリン療法は1型糖尿病の方にとっては、最善の治療を続けて行くことなのです。よって、1型糖尿病にはインスリン治療は一生必要になります。
 2型糖尿病や妊娠糖尿病、その他の理由でインスリンが必要になっている場合は、インスリンの産生が完全に停止している状態ではなく、相対的に不足している状態と考えられますので、状況に応じて、たとえば血糖値が正常近くに保持できるようになると、インスリン治療が不要になることがあります。
インスリンを持っていると空港の持ち物検査で止められると聞いたのですが、本当ですか?
 まったく問題ありません。インスリンは機内持ち込み可能です。まれに手荷物検査やエックス線検査などで引っ掛かった場合は「インスリンです」と告げるか、海外に出かけるときは、前もって英文説明書や英文で書いた「糖尿病です」のカードを持参して、提示すれば良いでしょう。
 先頃、中国の航空会社でインスリンの針が手荷物の中で見つかって、糖尿病だからインスリンは必要と言ったのに取り上げられてしまい、着いてからも返してもらえなかった、という事件がありました。必ずトランクの中にも予備の針を入れておいた方が良いでしょう。
インスリン治療は小さな子供でもやらないといけないものですか?
 小さな子供でインスリンが必要な場合は、おそらく1型糖尿病であると考えられます。1型糖尿病であれば一生インスリン治療が必要になりますので、自分で身の回りのことが出来る年齢になれば、自分で注射がうてるようにするのがよいでしょう。低年齢の子供であってもインスリンは必要です。成長するためには食事(栄養)が必要ですが食事を摂ればインスリン不足の子供はたちまち高血糖状態になります。いまのところこれを補う飲み薬はありません。
「インスリンをしている」と糖尿病の友人に話したら、「もうおしまいだ」と言われて、ショックを受けました。インスリンを使うことはそんなに悪いことなのですか?
 2型糖尿病の場合、インスリン治療が今ほど簡便でなかった時代にはインスリン治療は「最後の手段」のように考えられていた時代がありました。最終段階で使用するわけですから、もう糖尿病は重症化している段階ですね。おそらくその頃の印象が強く残っておられるのではないかと思います。現在、インスリン治療は簡便になり、より早く使用して合併症を発症させないようにつまり重症化を避けるために使用することも多くなされています。早くインスリンを使用したおかげでインスリン治療が不要になる場合も増えてきていますので悪い治療法だと思う必要はありません。
 ただし、1型糖尿病であればインスリン治療が大原則です。インスリン治療は最終段階ではなく、最初からインスリン治療をおこないます。1型糖尿病の方はずっとインスリン治療しますが、50年以上もインスリン治療している方も多くなりました。インスリン治療だから重症な糖尿病になっているということはありません。
インスリンを使用していたら食事は自由に食べてもいいと糖尿病の友人が言っていたのですが、本当ですか?
 自由と言っても、好きなものを好きなように好きなだけ、と言うことではありません。ルールの中での自由と言う意味です。偏食や暴飲暴食にならぬよう規則正しい食事の中での自由度の幅を広げられると言うことです。
 1型糖尿病の場合はもともと生活習慣に問題があるわけではありませんので、ある程度食事の自由度があると考えてもらってよいでしょう。
 しかし、糖尿病患者でなくとも、生活習慣病を予防することは必要なことでもあります。血糖コントロールに支障が出ない範囲でかつ体重の増加に気をつけた食生活を意識することが大切です。
 また、子供の1型糖尿病に関してはまず立派な大人への成長が重要となりますので、成長に必要な食事はしっかり摂り、それに見合ったインスリン量を調節していただくのが一番であります。
 2型糖尿病の方の場合では、食事療法が最も重要でありますので、指示エネルギー量の範囲内で食生活をやりくりする必要があります。やりくりする仕方を身につけましょう。
インスリン注射をはじめたら低血糖に気をつけるように先生に言われました。低血糖とはどんな症状ですか?どのようにしたらいいでしょうか?
 あくび、だるさ、頭痛、目がかすむ、などの症状のほか、そのまま放置しておくと、顔面蒼白、動悼、冷や汗、手指のふるえ、めまいなどが起こり、ひどい場合は、けいれん、昏睡となってしまいます。上記のような症状がみられたり感じたら、ブドウ糖などの糖質を補食しましょう。
 しかしながら、低血糖の症状というのは人それぞれです。上記のようなものが代表的ですが、自分で自分の低血糖症状がわかるようになるまでは、低い血糖値が出たときに、自分がどんなことを感じるか、よく観察するのがいいでしょう。低血糖の症状は自分でわかりにくいことも多いです。周りにおられるご家族の方や友人、学校の先生などのほうがわかっていることもよくあります。教えてもらうのも一案です。
 どうしても低血糖症状がわからないという無自覚性低血糖症で困っているという方でしたら、先生にお願いして入院し、血糖を低くしながら、低血糖の症状を知ってみるのも、良いことだとおもいます。
 低血糖時にブドウ糖などの糖質を補食しても、ブドウ糖が吸収されて血糖値が回復するまで10分~15分程度かかるのが一般的です。ブドウ糖を食べて静かに休んでいるとこの程度の時間で回復してきます。もしそれでも症状の改善がみられなければもう一度同じ量のブドウ糖を食べて様子を見てください。しかし、低血糖だと焦ってたくさんのブドウ糖を食べてしまうと、逆に高血糖を招いてしまいますので、ブドウ糖のとり過ぎには気をつけてください。

【2】 インスリン注射について

インスリンはお腹にうつよう指導されましたが、この前、腕にインスリンをうっている人を見かけました。インスリンを腕にうっても大丈夫なのですか?
 インスリン注射の主な場所として、お腹、上腕、太もも、お尻などの部位になりますので、腕にうっても大丈夫です。また体型によって好ましい部位や、運動の習慣などによってインスリンの吸収速度に若干差があったりしますので、主治医と相談してみましょう。
 またインスリンは同じ場所ばかりにうっていると、皮下にしこりができて固くなってしまい、インスリンの効きが悪くなることがよくあります。どの部位にうつにしても毎回少しずつずらして注射をする必要があります。
インスリン注射をはじめた時に血糖測定もするよう言われ、毎回測定しています。冬は指先が痛いから測りたくないのですが、やめても大丈夫ですか?
 インスリン注射をはじめた場合、インスリンがきちんと効いて血糖値が正常範囲になっているか、効きすぎて低血糖になっていないか、インスリン量が足りずに高血糖などになっていないか、などを知る必要があります。季節に関係なく測ることを心がけましょう。
 血糖測定のための、穿刺部位は指先以外でも可能です。手のひら、腕(上腕など)、その他の部位、つまり採血ができる場所なら可能ですが、痛みや血糖値の安定性など部位によって違いがあります。また、腕やその他の場所から採血する場合、1型糖尿病の方では、血糖が低いと感じていても測定値が低くないこともありますので、ご注意ください。
 対策としては指先をよく温めてから穿刺をすると多少痛みも和らぎます。病歴が長くなって自分で症状がある程度わかるようでしたら、主治医と相談して測定回数を見直してみることもいいのではないでしょうか。
まわりにインスリン注射をしている人がいません。私だけなのでしょうか?
 1型糖尿病の人は、ほとんどがインスリン注射をしていますし、2型糖尿病を含め糖尿病でインスリン注射をしている人は決して少なくありませんので、だれもいないと心配する必要はありません。
 日本糖尿病協会(HP:www.nittokyo.or.jp/ )では小児対象の「サマーキャンプ」や成人対象の「ヤングDMカンファレンス」を全国規模で開催しています。このようなところに足を運んでいただくとインスリン注射をしている仲間に出会えます。是非わかりあえる仲間を見つけていただきたいと思います。
インスリンの効き方を教えてください。
 インスリン製剤には、効果が出るまでの時間や、効果の持続時間により、超速効型・速効型・中間型・混合型・持効型の5種類に分けられます。

・超速効型・・5~10分で効き始め、3~5時間持続する
・速効型・・・食前30分前に注射して、1~3時間後に効き目のピークがあり、
        5~8時間作用が続く
・中間型・・・注射して30分から3時間で効き始め、18~20時間ほど持続する
・混合型・・・超速効型と中間型、または速効型と中間型を混合したタイプの
        インスリンで、それぞれの良いところを持ち合わせたタイプです。
        作用時間は中間型とほぼ同様です
・持効型・・・溶解・注射して2~3時間で効き始め、ほぼ20-24時間持続する。

基本的には上記のような作用時間ですが、注射をする時の血糖値によったり、これから運動をする時などは、それらも考慮してインスリン注射量を考えなくてはいけません。要するに自分で結論を出していく事が望まれます。
また、作用開始までの時間も、持続時間も、個人差がけっこうあります。
この前、指を怪我してインスリン注射のボタンが押しにくくなりましたが、どうしたらいいですか?
 基本的には、どんな事があってもインスリン注射は中断してはいけません。指や手を怪我した場合は、もう一方の手で行なうことが出来ると思います。利き手ではないので若干やりづらい点もあるかと思いますが、工夫してみましょう。
 また、インスリン注射用補助具もあるようですので病院の糖尿病スタッフに相談してみるとよいでしょう。
この間高校野球の応援で野球場に行きました。インスリンをうつときインスリンが暖かくなっていたのですが、大丈夫でしょうか?また、どのように保管すれば良いでしょうか?
 インスリンは高温にさらされたり凍結してしまうと十分に効果を発揮できなくなります。インスリンはタンパク質ですので、変性してしまうからです(タンパク質の変性とは、熱したフライパンの上に生卵を落とすと熱により透明でトロっとしていたタンパク質が白くなって固まる現象です)。そのためインスリン開封前は冷蔵庫での保管が必須であります。今回のように屋外で活動する時にはインスリンを入れたバック等を木陰においておく、インスリンのケースをタオル等でくるんでおき保冷剤などをいっしょに巻いておくと高温化することを避けられます。
 特に、日中日差しが強くなると車の中はあっという間に高温にさらされますので、車内に置きっぱなしにすることは避けましょう。
 一度熱変性したインスリンは元には戻らないので、高温の環境下での取扱いには十分注意しましょう。

【3】 学校や社会とインスリン治療

インスリンをしていても、学校の部活は続けられますか?
 もちろん問題ありません。日本国内でもインスリン治療を続けながら活躍を続けるスポーツ選手がたくさんおられますので、主治医の先生のアドバイスをきちんと理解して今後も部活動はがんばって励んでください。
 ただし、運動関連の部活(筋肉を動かすもの)などは、ご自分がインスリン注射に慣れ、低血糖の症状が確実にわかるようになってから行った方が良いかと思います。
インスリンをしていても仕事は続けられますか?
 もちろん問題ありません。インスリンの作用をきちんと理解し低血糖の対処法も理解しておれば、仕事に支障をきたすことはありません。また職場にもきちんと説明をしておき、糖尿病やインスリン注射を行なっていても問題なく仕事が出来るということを、自らが実証して行くことも大切なことです。
トラックの運転をしているのですが、いつ食事ができるかわかりません。インスリン注射はいつうてばいいですか?
 インスリン製剤のうち、速効型、超速効型インスリンは食前に注射するので、追加インスリンと呼ばれます。追加インスリンとしての、食事にあわせてうつインスリンは食事をとれるタイミングで直前にうてばよいでしょう。
 中間型や持効型溶解インスリンは、基礎インスリンと呼ばれるものです。基礎インスリンは、食事と関係なく一定の決まった時間に注射します。
 追加インスリンと基礎インスリンを合わせてインスリン注射を頻回に行う方法をしている方は、上記のように、比較的食事の時間を気にすることはありません。しかし、極端にずれるときは、うまく血糖コントロールできにくくなります。先生とよく相談してください。
 それ以外の混合型インスリン製剤を使用している方も、先生とよく相談しましょう。
インスリン注射を人に見られたくないのですが、外に出た時はどうしたらいいですか?
 喫茶店などで他人にわからないようにインスリン注射をする自信のある方も多いです。血糖測定も警告音を消し、友人たちにもわからないよう出来ているものもあります。そんな要領が身に付いていない人は、トイレなどで行うのも仕方ない事だと思います。
インスリン注射をしていることをクラスのみんなに話したらバカにされそうで言いたくないのですが、どうしたらいいですか?
 インスリン治療も含め糖尿病のことを周りの人たちに理解していただいていると、困ったときにサポートをしていただきやすくなります。主治医の先生にも協力してもらい、学校長、担任の先生、養護教員、そしてクラスメートやそのご家族などに対し、できるだけ理解していただく努力はしたらいいのではないでしょうか。真剣に話をしてバカにされることはありませんよ。
 昔と違って、糖尿病やインスリン注射ということが少しずつですが、特別なものからその人にとってあたりまえのものへ理解されつつあります。自分の個性として認識されるよう、前向きに考えてみるのもいいのではないでしょうか。
 一方、〝言わない〟と言う選択肢もあります。この場合、困ったことが起きた時にも助けてもらうことはできませんので、それなりの覚悟が必要です。
結婚するにあたり、彼(彼女)は病気の事を知っていますが、わたしは先方の両親にも告げたいとおもいます。私の親は〝言うな〟といいます。どちらが良いのでしょうか?
 糖尿病のこと、インスリン治療が決して悪いことではありません。しかし人によって、物事にたいしての受け取り方は異なりますので、現段階で「言う」「言わない」の、どちらの選択肢が正しい答えなのか、わからない問題でもあります。
 事情を踏まえて、彼(彼女)や両親としっかりと話し合いを持つことが大切ではないでしょうか。
運転免許を取るように会社から言われましたが、低血糖の事を考えると不安になります。みなさんはどうやってこの問題をクリアしているのでしょうか、教えてください。
 自動車運転中の低血糖は大きな事故にもつながります。運転前の注意点として、乗る前に必ず血糖測定を行う、速効性のブドウ糖などを手近に用意しておく、運転に集中できなくなったり物がよく見えなくなったりしたら、つまり、低血糖症状を感じたら、直ちに安全を確保し、停車してブドウ糖などの補食を行なうなどは、必ずしなければならないことです。
 また、運転免許には欠格事項というものがあります。簡単に言うと「運転する資格がない」ということです。糖尿病患者に関連があるものとしては、「無自覚性の低血糖」という条件があります。この背景には1年間に2~3件程度、低血糖による意識障害を原因とする死亡事故が発生していることからきています。ただし、現代社会に生きる私達にとって、運転免許証の取得は、必須に近いものであります。低血糖による事故などが、一人の問題でなく社会問題となってしまうので、運転には十分に気をつけましょう
 〝無自覚低血糖〟については、いろいろな説があります。これは糖尿病の病態ではなく、薬の副作用です。「意識を張り巡らしていれば必ず何らかの症状がある」と言う患者と、「何も感じられない」という人がいます。どちらにしても本人次第です。〝薬の副作用〟であるならば、何らかのシグナルを感じ取る努力も必要です。糖尿病患者さんと自動車運転:さかえ2014年3月号 特集
今みたいに不景気な時には、就職時に病気の事は言わないほうが良いとおもうのですが…。いかがでしょうか?
 確かに就職試験等においては、病気がありますと申告することはプラスにはなりにくいかもしれません。自ら進んで申告しなくてもよいでしょうが、面接等で問われた時にどう答えるかの準備をしておくとよいのではないでしょうか。
 また、実際仕事を始めるにあたっては、上司や同僚のサポートを受けるためにも、正しく理解していただくとよいのではないかと思います。
糖尿病患者会があると聞いて参加したら、食事制限の勉強会でした。インスリン治療の仲間が欲しいのですがどうしたらいいですか?
 日本糖尿病協会が主催する小児対象のサマーキャンプや、成人対象のヤングDMカンファレンスがあります。どちらもインスリン治療中の患者さんが多く集まりますので、お近くで開催されるイベントに足を運んでみてはいかがでしょうか?
 また、ヤングの会の活動が活発な会もあります。ヤングの会については日本糖尿病協会ホームページから調べることができます(HP/http://www.nittokyo.or.jp/ )。

【4】 女性とインスリン治療

インスリン治療がはじまっても、子供は産めますか?
 もちろんです。1960年代頃までは出産なんて考えられませんでしたが、今は出産はOKです。ただし、妊娠前の血糖コントロールは胎児への影響も報告されていますので、妊娠前から計画をして血糖値を安定させることが必要です。そのため、普段は飲み薬でコントロールをとっている人も、1日数回の血糖測定や数回のインスリン注射に治療が変わる場合がしばしばです。HbA1cを6,2%未満(NGSP値)にする、食後2時間の血糖値を120mg/dl以下にコントロールをするためには、インスリン注射でのコントロールのほうがむいているようです。2つ目に、腎臓が悪くないことです。これについては主治医によく尋ねてください。
私は小児期発症の1型糖尿病です。彼は健常人ですが、子供を産んだ時の子どもが糖尿病になる率はどれぐらいなのでしょうか?また、両親が1型の場合や両親が2型の場合なども教えてください。
 1型糖尿病は親から子へという形で遺伝する疾患ではありませんので、お子さんが1型糖尿病になることは稀です。日本人の10倍以上、1型糖尿病の頻度が高い欧米の統計を見ますと、1型糖尿病の母親から生まれた子供が1型糖尿病になる確率は2%程度と言われています*。日本人における統計はありませんが、1型糖尿病が欧米の10分の1以下と低頻度であることを考慮しますと極めて稀だと考えられます。両親が1型糖尿病の場合にお子さんが1型糖尿病になる率はわかりません(そのようなケースが少ないため正確な統計がありません)。一方、両親が2型糖尿病の場合にお子さんが2型糖尿病になる率は、家族歴のない人に比べるとかなり高くなることが予想されますが、予防・治療が可能な疾患ですから、子供を産むことを控える必要はないと思います。 *Diabetes 44:295, 1995
私は1型糖尿病です。子どもを授かりました。生まれた子供は健康でしたが、小学校へ上がるころに、子どもが1型を発症しました。私のせいですか。
 可能性は否定できません。0.0000%、可能性がないということは言えないということです。1型の場合、本来遺伝はしないと言われていますが、1型糖尿病になった方々に多く見られる遺伝子というのは、いくつか言われています。しかし、それではこの遺伝子を持つとかならず1型糖尿病になるのか、というと、そうではありません。これはそういう意味合いくらいの遺伝子です。ですから、何かのタイミングで発症する可能性はあります。

【5】 インスリン治療と家族

うちの子供は5歳で自分では注射がうてません。私がいつもうつのですが、私が風邪をひいて倒れたら子供のことはどうしたらいいでしょうか?
 5歳の子供なら、自己注射ができます。親の目からは痛ましいかもしれませんが、本人のためです。1型糖尿病は一生インスリン治療が必要になりますので、自分で身の回りの事が出来る年齢になれば、病気の事は早く学習させ、自分で注射が打てるようにするのがよいでしょう。日本糖尿病協会が行っている全国の〝サマーキャンプ〟に参加させるのも良いと思います。
インスリン注射は患者本人でないとうつことができないのですか?
 インスリン自己注射が健康保険の適応になったのは、昭和56年です。それ以前は、わざわざ医療機関に出向いて注射をしてもらっていました。昭和56年以降、患者本人並びに家族なら、注射ができるようになりました。
 資格を持っていない第三者は、医師の指示があってもまだ許可されませんので、ご注意ください。ご家族は、いざというときに注射ができるように準備しておくことも大切ですね。

【6】 糖尿病全般について

三姉妹ですが、次女の私だけがなぜ糖尿病になったのですか?
 糖尿病にはタイプが2種類あります。1型糖尿病と2型糖尿病です。2型糖尿病は、多くの場合、家族も代々糖尿病の方が多いといわれています。両親や祖父母が糖尿病だったりすると、自分も糖尿病に罹りやすいと言われています。また、生活習慣が似てくるため、更にその傾向は強くなります。
 一方、1型糖尿病は違います。膵臓のインスリンを産生する細胞(β細胞)が何らかの理由によって破壊されて、1型糖尿病が発症するといわれています。自己免疫疾患だと言われています。いまのところ、直接の原因がよくわかっていません。兄弟姉妹がいても、自分だけが1型糖尿病になってしまう、というケースも存在します。
男2人、女2人の兄弟ですが、女性2人が糖尿病になり、そのうちの私だけが腎臓が悪くなっているといわれました。姉と同じ食事をして、同じように運動しています。HbA1cも同じなのに何故ですか?
 ご両親や祖父母、親戚などの状態がよくわかりませんが、兄弟姉妹といえども、遺伝子はまったく同じではありません。確かに、生活習慣は兄弟姉妹では同じようであるかもしれませんが、病気の進行具合は同じになるとはいいきれません。今後は、腎臓に負担をかけない生活を心がける、こちらに目を向けていきませんか。
年老いてから両親は糖尿病になりました。私は子供の頃より糖尿病です。何か関係があるのでしょうか?
 これだけでは何とも言い難い状況ではありますね。まず、自分と両親の糖尿病がどのようなタイプであるかを確認してみるとよいでしょう。2型糖尿病は家族性を認めることが多いと言われていますが、1型糖尿病は家族性はないと言われていますので、主治医の先生に相談してみてください。
 また、昔は糖尿病に罹ってもあまり重大な病気とは考えず、放置している事が多かったようです。ですから、気が付いたときには合併症が進んでいたりしました。ご両親の場合も、発症した時と発見された時に時差があるのではないでしょうか。そして、現在は食生活が欧米化したうえ、動く事(運動量)が減っています。代謝も歳と共に低下します。それらのことが影響し、発症したのかもしれません。あなたは小学校で学校検診が始まり、何の症状もないうちに発見されたのだと思います。折角、早期に発見されたのですから、きちんと勉強して、合併症などを出さないよう気を付けて下さい。
家の親戚には糖尿病の人が沢山います。私はまだ何ともありませんが、何に気をつけたらよいのでしょうか?
 2型糖尿病は自覚症状のない病気です。健康診断や人間ドックを定期的に受けて、自分の健康状態をまずしっかり知ることが大切です。暴飲暴食を避ける、運動量を増やしてみるなどの、ちょっとした生活習慣の見直しを是非続けてみてください。
合併症はコントロールが悪いと起こるといわれますが、検査の際、「眼のほうは視力も良く問題事ないのに、腎臓だけが凄く悪くなっている」と言われました。HbA1cも良いのですが、なぜ腎臓だけ悪くなっているのですか?
 糖尿病の合併症は、一般的にはコントロールの状況や病歴の長さに大きく影響を受けると言われています。ですが、個人によって、もともとの腎臓の機能の良し悪しも合併症の発症しやすさに影響するようです。
 糖尿病とは関係なく、腎臓に何らかの疾患があったこともあるかもしれません。目も悪くなく尿たんぱくも出ていないのに、クレアチニン値だけが高いという人が、ヤングの年代でも1割~2割います。きちんと検査をしてください。
出産をした直後に癌が見つかりました。治療の為に入院したところ、同室の人に2型を含め糖尿病の人が4人もいました。糖尿病は、癌にもなりやすいのでしょうか?
 糖尿病の患者さんは、一般の人に比べて少し癌になりやすいと言われています。糖尿病で病院に定期的に受診しているから安心しがちですが、癌は健康診断をきちんと受けておかないと早期発見が難しいですので、癌検診も忘れず受けることをお勧めいたします。
膠原病と言う自己免疫不全の病気に罹りました。珍しい病気のはずなのに、入院した病室は4人部屋で、うち2人が小児期発症の1型糖尿病でした。自己免疫不全同士の疾患として、やはり私たちは罹りやすいのでしょうか。
 1型糖尿病が自己免疫の機序で起こってくることを上記にも書いていますが、膠原病と合併する頻度は少ないようです。ただし、甲状腺の自己免疫疾患と合併することは、それよりも頻度が高いといわれています。
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