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Roger Moore Project

Last Update:2025年11月14日New

JADECでは、小児期発症の糖尿病(ダイアベティス)の子どもたちとその家族を支援し、彼らを取り巻く環境の包括的な改善を目指す新プロジェクト『Roger Moore Project』を発足させました。本プロジェクトは、病気とともに生きる子どもたちが自信を持って未来を描ける社会の実現を目指し、教育・医療・地域をつなぐ多角的な支援を展開していきます。

プレスリリース
in English

小児糖尿病の課題とプロジェクトの背景

小児期に糖尿病(ダイアベティス)と診断された子どもたちは、日々の血糖管理や医療との関わりの中で、身体的・精神的な負担を抱えながら生活しています。特に診断直後は、本人も保護者も大きな不安や孤立を抱えやすく、適切な情報や支援につながるまでに時間がかかる子どもたちも少なくありません。また、学校現場では糖尿病(ダイアベティス)に対する理解が十分でないこともあり、子どもたちが安心して学校生活を送るための環境整備が求められています。

こうした課題に対し、2025年4月、日本の製薬企業経営の実績をお持ちのRoger Moore(ロジャー・モーア)氏より、JADECに対し、「日本の糖尿病の子どもたちの未来のために、継続的な支援をしたい」との申し出がありました。モーア氏のご厚意を受け、JADECはプロジェクトチームを設置し、World Diabetes Dayの本日、『Roger Moore Project』の始動を正式に宣言しました。

活動の3つの柱

『Roger Moore Project』の初年度は、まず1型糖尿病(ダイアベティス)とともに生きる子どもたちとその家族にフォーカスします。

1型糖尿病と診断された直後、子どもと保護者は強い不安と混乱の中に置かれます。JADECは、小児糖尿病キャンプなど、長年に亘る小児糖尿病(ダイアベティス)対策事業の知見から、「最初の一歩をどう支えるか」がその後の治療意欲や自己肯定感に大きく影響すると考えました。JADECならではの支援として、以下の3つを柱に事業展開します。

1. 発症初期の子どもへの支援:安心と希望を育む場づくり

  • 発症初期の不安に寄り添う交流会(医療者・同病者との対話、ワークショップなど)
  • 年齢に応じた情報提供ツール「わたしのからだとダイアベティス」(仮)シリーズの制作

2. 発症初期の子どもをもつ保護者への支援:共感と情報の橋渡し

  • 保護者同士が語り合える交流会(医療者による講習、家族同士のつながり作りなど)
  • 発達段階別情報提供ツール「わたしたちの子とダイアベティスと」(仮)シリーズの制作

3. 学校環境への働きかけ:すべての糖尿病(ダイアベティス)の子どもに安心を

  • 出張糖尿病(ダイアベティス)教室、教職員向け補助教材の制作等を通じた教育現場への支援
  • 学校教育関連組織との連携による包括的支援体制の構築

プロジェクトの社会的意義

『Roger Moore Project』は、既存の医療支援や情報提供を補完しながら、発症直後という最も支援が届きにくい時期に焦点を当てた新しいアプローチを提示します。本プロジェクトの新規性と社会的意義は、以下の点にあります。

  • 感情・情報・制度を同時に支える立体的支援
  • 子どもと保護者の「自信」「自己肯定感」「自己効力感」や「安心感」を育む設計
  • 医療・教育・地域が連携する三位一体型モデル
  • 他の慢性疾患にも応用可能な全国展開型の支援の枠組み

そして、このプロジェクトは、糖尿病(ダイアベティス)のある子どもたちの支援にとどまらず、JADECのアドボカシー活動と連携し、「病気があっても夢を描ける社会」という価値観を広げるムーブメントとして、社会全体に波紋を広げていきます。

Roger Moore氏のコメント

私は40年以上にわたり日本に住んでおり、そのうち30年間はノボノルディスク社で働いていました。この間、ダイアベティスコミュニティに貢献する多くの誠実で献身的な方々と出会う幸運に恵まれました。

 

その一人である武田倬先生は、私と家族をある年の夏、鳥取県で開催された大山家族の小児糖尿病キャンプに招待してくださいました。そこで私たちは、子どもたちとその親が直面している問題を直接体験し、武田先生をはじめとする大山の仲間たちから受けた教育、友情、愛、そして励ましが、いかに良い影響を与えているかを目の当たりにすることができました。これは私にとって、本当に感動的な経験でした。

 

退職後、私はオーストラリアに戻りました。最近、家族と共に、日本のダイアベティスの子どもたちとその親を個人的に支援したいと考えました。

 

ダイアベティスのある人の生活向上におけるJADECの確固たる役割を踏まえ、清野理事長に協力の可能性について相談しました。

 

結論として、オーストラリアのロジャー・ムーア・ファミリー・トラストが今後10年間、日本の小児糖尿病対策のための一連の新規プロジェクトを財政的に支援することに合意しました。医療、教育、そして愛情あふれる地域社会の支援こそが、質の高いケアの基盤であると信じています。私たちの新しいプロジェクトが、これらの理念の実現に大きく貢献することを願っています。

 

大山キャンプで私が見たように、子どもたちとその親御さんの顔に笑顔と希望が溢れ、子どもたちが社会の他の子どもたちと同じように夢を実現する姿を見たいと願っています。

 

ロジャー・モーア

清野裕理事長のコメント

糖尿病と診断された子どもたちが、病気によって夢を諦めることなく、自分らしく生きていける社会をつくりたい――それが、私たちJADECの願いです。 『Roger Moore Project』は、発症直後という最も不安な時期にこそ、子どもと保護者に寄り添い、安心と希望を届ける取り組みです。このプロジェクトを通じて、医療・教育・地域が連携し、病気のある子どもたちが孤立せずに成長できる環境を広げていきます。Moore氏の思いを形にし、社会全体で“病気があっても夢を描ける”という価値観を育てていきたいと考えています。

今後の展開

2026年度には、1型糖尿病発症初期の子どもと保護者を対象とした交流会を全国で3〜5回程度開催予定です。 また、子ども向け・保護者向けの情報提供冊子シリーズは、2026年6月末までの制作・公開を目指して進行中です。 医療機関や教育現場との連携を通じて、これらのツールが広く活用されることを目指します。

本プロジェクトは数年間にわたって継続的に実施され、今後も小児2型糖尿病対策も含む新たな支援プログラムを随時展開していく予定です。

 

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