糖尿病治療は日進月歩で変化しており、運動療法においても最新治療に対応した方法や新たな知見が発信されています。一方、医療現場において、運動療法の実施率は非常に低いのが現状です。そこでは、診療報酬の問題だけではなく、「運動の効果をうまく説明できない」「具体的なプログラムが立案できない」「（チームとして）どのような支援体制がよいかわからない」といった声も聞かれます。
本特集では、運動による糖代謝メカニズムの最新知見、糖尿病運動療法における評価・指導の実際、運動療法を考慮した食事療法の工夫、チームによる運動療法支援について解説していただきます。そして、本特集がチームによる糖尿病療養指導の発展の一助になればと考えています。
（四條畷学園大学 リハビリテーション学部　本田 寛人）

釧路CDE研究会は、北海道東部に位置する釧路市で2006年7月に発足し、今年で15年目を迎えました。世話人数82名（医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士、保健師、歯科衛生士等々）を有し、主な活動は年2回の講演と実践形式のワークショップ、毎年世界糖尿病デーに合わせて市民参加型の釧路糖尿病デーとブルーライトアップを開催しています。2015年より北海道初の地域糖尿病療養指導士（CDEL）育成にも乗り出し、紆余曲折を経て、現在までに延べ35名のCDELが誕生しています。

「正しい情報を伝えれば正しい意思決定ができるはず」という人間は概ね合理的であるという前提で医療コミュニケーションにおける意思決定や行動変容が考えられてきましたが、実際には、様々な「バイアス」（系統的に逸脱する傾向）などを受けるため合理的ではありません。これを行動経済学では「限定合理性」と呼びます。糖尿病治療の場面においても、この限定合理性を前提に医療コミュニケーションを考える必要があります。

コロナ禍により、新しい情報も自ら積極的に取りに行かないとなかなか得られない世の中になりました。そのような中、ここ1年ほどの間に、糖尿病関連では、特に注射薬の新薬が次々と発売されています。皆さんの現場では既に新しい薬剤を使用されているでしょうか？ ここ数年でまた、糖尿病の治療選択肢が一気に増えそうですね。今回はその中で、超速効型インスリンをテーマにしました。インスリンの発見はもう100年も前のこととなります。今では当たり前のように使用されるインスリンですが、現在の医療提供は100年前に発見してくれた研究者のお陰ですよね。今もどこかで発見されているものが、100年後には当たり前のものになっているのでしょうか。