特集
骨を知る:骨粗鬆症
骨は、身体の支柱であり歩行をはじめとした日常生活動作を行う際に不可欠であり、骨を守ることが糖尿病治療の目標である日常生活の質(QOL)の維持、健康寿命の確保につながります。骨粗鬆症は加齢に伴い増加することから、高齢糖尿病患者の骨折予防が重要な課題となっています。
世界保健機関では、「骨粗鬆症は、低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患である」と定義しています。
そこで本特集では、骨粗鬆症について糖尿病との関係や検査方法から正しく理解し、糖尿病治療とあわせて骨粗鬆症を治療するための薬物療法、食事療法、運動療法、歯科治療についてわかりやすく解説していただきます。また、骨粗鬆症リエゾンチームの多職種連携の取り組みを紹介していただき、チームによる糖尿病療養指導をさらに発展させていきたいと考えます。
石川県立中央病院 医療技術部リハビリテーション室 片田 圭一
金沢大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内分泌学分野 篁 俊成
連載「地域医療の現場から」
薬局での歯周病セルフスクリーニングを起点とした歯科との糖尿病連携
歯周病は、糖尿病における腎症、網膜症、神経障害、大血管障害、足病変に次ぐ6番目の合併症といわれています。糖尿病患者さんに対し歯周病の治療や管理を行うことにより、血糖コントロールが改善したなどの相互に与える影響が大きいことが数多く報告され、日本糖尿病学会が2016年に発表した糖尿病治療のガイドラインの中でも、歯周病治療が血糖コントロールの改善に有効と明記されました。このように糖尿病患者さんが定期的にかかりつけ歯科において口腔健康管理を受けることは、糖尿病の治療・予防のためにも重要だといえます。
現在、山口県歯科医師会では、糖尿病患者さんのシームレスなケアのため、医科歯科連携だけでなく、薬剤師会、看護協会、介護職、行政など様々な職種との連携を模索しています。しかし、我々歯科医が思っているよりも、他職種や県民は「糖尿病と歯周病との関係」への理解や認知が少ないというのが現状です。まずは糖尿病における口腔健康管理の必要性を知ってもらうことが重要であり、その1つとして、山口県歯科医師会と山口県薬剤師会は「糖尿病・歯周病連携事業」を開始しました。連携合意までの経緯や事業内容について紹介したいと思います。
連載「糖尿病をめぐる診療科リレー」
糖尿病と便秘 便秘診療における
適切な介入とピットフォール
糖尿病において、自律神経障害は3大合併症の1つであり、全身の臓器に影響を及ぼし、消化管にも異常を来す。今回は排便障害、特に便秘に焦点を当てて概説する。
便秘は糖尿病患者の20~44%に認めるとされ1)、下痢と交互に起こることがある。主に大腸における副交感神経、または胃結腸反射の障害によって生ずる。
慢性便秘症の患者の有病率は報告によって差はあるが、2~27%程度とされており、高齢化に伴って有病率は増加傾向にある。65歳以上の人口割合である高齢化率は、2016年では27.3%に及び、高齢社会が進むこれからも慢性便秘症を有する患者は増加していくと見られる。糖尿病患者においても平均寿命は延びてきており、便秘は増加していくものと考えられる。便秘を有する患者は身体的にも精神的にもquality of life(QOL)の低下が認められることもわかっている2)。便秘に対しては、排便回数の減少のみで便秘の判断をする医師も多く、患者も適切に医療機関を受診していない場合も多い。また便秘で受診する患者は、治療に対して満足していない場合が多い。
一方で、糖尿病患者においては大腸がんを含め、悪性腫瘍の罹患率が高いことが指摘されており、他の機序が原因となる便秘についても鑑別しなければならない。
一般の人口よりも便秘の罹患率が多いと考えられる糖尿病患者の便秘に対して、我々医療者は正しい認識を持ち、適切に診療を行う必要がある。
連載「糖尿病診療update」
糖尿病患者における身体活動の工夫
糖尿病治療において運動療法は非常に重要であるが、食事療法や薬物療法に比べ、実施できないまたは継続できない患者が多い。「できない理由」は様々であるが、日本糖尿病学会の委員会報告(糖尿病運動療法・運動処方確立のための学術調査研究委員会)では、「運動をする時間がない」が41%であり、運動を維持・継続するために必要(重要)と思う事項として、「時間」を挙げる患者が60%に上っていた1)。こうした患者に対しては、それぞれの生活スタイルに合わせて、従来の方法にとらわれない運動の実施や生活活動の増大など、身体活動の工夫が必要である。本稿では、糖尿病患者における運動療法の現状と、運動を中心とした身体活動の工夫について、特に時間的制約のある患者へのアプローチに焦点を当てて概説する。