特集
活用しよう!
日糖協の糖尿病療養指導ツール
糖尿病の診療においては、患者さんの主体的な治療への取り組みをサポートする療養支援が大切です。日本糖尿病協会では、糖尿病診療に関わる医療従事者の「療養支援力」の向上のために、様々な療養指導ツールを開発・提供しています。本特集では、各療養指導ツールのエキスパートの先生方に、その特徴や活用の仕方などについてご解説いただきます。
座談会
日本の糖尿病医療の変化と糖尿病カンバセーション・マップ™
厚生労働省が2016年に公表した「国民健康・栄養調査」では、糖尿病の有病者および予備軍がそれぞれ約1000万人に達したことが明らかにされました。糖尿病の問題点は、自覚症状がほとんどない状態で病気が進展し、気が付いた時には既に重症化している可能性が高いことです。例えば、糖尿病は成人失明や血液透析導入の主要な原因であり、糖尿病を発症すると脳卒中や心筋梗塞のリスクが倍増することも指摘されています。そのため、糖尿病では早期発見と早期治療開始、そして合併症予防が何よりも重要になります。そうした観点から、国際糖尿病連合(IDF)は糖尿病患者さんの療養指導ツールとして糖尿病カンバセーション・マップTMを開発し、その普及活動を世界規模で推進してきました。このツールは、糖尿病患者さんや家族、友人がグループで話し合い、それぞれの知識や体験を共有し、糖尿病について互いに学び合う学習教材です。我が国でも日本糖尿病協会の主導で普及活動が開始され、今年で8年目を迎えました。今回はその普及活動に尽力されている糖尿病カンバセーション・マップ委員会の皆様にお集まりいただき、現状の課題と今度の展望についてお話しいただきました。
連載「地域医療の現場から」
これならできる!カードシステム活用法!
~私達のクリニックではこんな使い方をしています~
糖尿病の合併症を防ぐためには、本人の理解と生活習慣の改善が欠かせません。しかし、病状の進行や生活環境は患者さん個々で様々であり、患者さんごとに学ぶべきことが異なり、きめ細かな指導は難しいものです。2016年に日本糖尿病協会より、効率的に患者さんを指導するためのカードシステムが開発され、全国で講習会が開催されて普及が始まりました。
カードシステムとは、指導の個別性や継続性に重点を置き、指導者に使いやすく、患者さんにとってもわかりやすく、治療に前向きな気持ちになれるような教育用資材で、糖尿病患者教育の均てん化・標準化を目指したものです。患者さん1人1人の特徴に合わせて、79種類のカードを使用し、指導項目を組み合わせて指導プランを作成し、71種類の指導箋が指導をサポートします。
当院は糖尿病専門クリニックであり、個々の患者さんの状況に合わせて資料を用い指導を行っていましたが、指導経験にはスタッフ間で差がありました。2型糖尿病新患患者さんに対してはパスを用いて指導を行っていましたが、この指導にカードシステムを活用することで、看護師だけでなく、管理栄養士や健康運動指導士など各分野から統一した指導ができるよう新患パスを見直しました。活用の実際をご紹介します。
連載「糖尿病をめぐる診療科リレー」
骨粗鬆症―骨密度の低下と骨質の劣化―
昨今の超高齢社会において、骨折リスクに大きな影響を与える骨粗鬆症は罹患患者も多く、その予防や診断・治療の必要度が高い。骨粗鬆症における骨強度の低下の要因は、大きく骨密度の低下と骨質の劣化に分けられる。後者には材料特性の劣化と構造特性の劣化が含まれるが、双方ともホルモンバランスの変化、加齢、力学的負荷の変化、生活習慣病などが破骨細胞と骨芽細胞の骨吸収と骨形成のカップリングバランスに影響を与えることにより引き起こされる。原発性骨粗鬆症のほか、糖尿病やステロイド治療等に伴う続発性骨粗鬆症も増加しており、個々の病態に合わせた診断・治療が求められる。そのため、それら骨粗鬆症の成因を理解し、骨折リスクを評価することは骨粗鬆症の治療において重要である。
連載「糖尿病診療update」
糖尿病透析患者と非糖尿病透析患者の心理・ケア
我が国では、2016年末で32万9609名の患者が透析を行っている。その中で、原因疾患の第1位となっているのは糖尿病腎症である。新規に透析導入する患者の原疾患では、1997年までは慢性糸球体腎炎が第1位を占めていた。しかし、1998年より糖尿病腎症がその数を上回り、その後は増加の一途が続いていたが、ここ数年はほぼ横ばいで推移している。また、全透析患者の原疾患で糖尿病腎症が占める割合も年々増加し、2011年末には主要原疾患第1位となり、その後も増加を続けている。このように、糖尿病と透析は密接に関係していることがわかる。
糖尿病腎症も含め、慢性腎臓病となる患者は少なからず長い間闘病生活を続けており、様々な制限や苦痛を経験してきている。そして、病期の進行により透析導入を余儀なくされた患者の落胆や苦悩は計り知れないものであると推察される。透析患者個々に合ったケアを実施する上で、患者の心理を理解することが重要である。
連載「糖尿病診療update」
RMP(医薬品リスク管理計画)と糖尿病治療薬
RMPは、厚生労働省およびPMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)の指導の下で進められているものであり、国内でRMPが導入されて6年目を迎えている。新しい薬剤であるほど臨床使用における情報は乏しく、だからこそ私達は慎重に取り扱っていく必要があるだろう。RMPは、定められた様式に基づいて医薬品ごとにリスク情報を文書化し、関係者で共有していくことで安全対策をより一層強化していくことを目指している。近年の糖尿病治療薬の進歩は目覚ましく、新たな作用機序を有する薬剤が数多く承認されている。そこで本稿では「RMPの主な特徴」についてまとめ、「添付文書との違い」や「患者向け資材」について糖尿病治療薬を例に挙げてみた。臨床使用経験の少ない薬剤こそ、RMPも活用しながら日頃の療養指導に活かしていけたらと考えている。