我が国は未曾有の高齢社会を迎えようとしていますが、その背景には出生率の低下があります。一方、若年層による出生数の減少と同時に、中堅層では出生数の漸増という状況変化が生じていますので、妊娠から周産期にかけてのリスク軽減は重要な課題となりました。実際、ライフスタイルの変化から、糖尿病などの生活習慣病は着実に増加しており、これらの健康障害の低年齢化によって、糖代謝異常を合併した妊娠の頻度も増えています。従って、母体の妊娠合併症や将来リスクを防ぎ、児の健全な発育を担保するためには、診療科（産科、内科、小児科など）と職域の枠を超えた血糖管理と療養指導の意義を学ぶことが大事です。
（康生会武田病院　病院長　武田純）

長期にわたるセルフケアが必要な糖尿病患者さんの支援には、様々な病態に応じた治療方法の選択、合併症の発症やライフスタイルの変化等の個別性に応じた療養支援が、切れ目なく提供されることが重要です。そのため、糖尿病患者さんの支援において、糖尿病の療養に関する専門的な知識を有する糖尿病療養指導士の関わりの必要性が高まっています。
佐賀県は糖尿病専門医が非常に少ない県であり、県内の糖尿病患者さんの支援を糖尿病専門医のみで実施するには困難な状況でした。そこで、2011 年度より県内の糖尿病の専門医療機関である基幹病院と、かかりつけ医療機関との連携を強化することで、県内のどこにいても均てん化した糖尿病医療の提供や、療養支援が受けられるための取り組みである「佐賀県糖尿病コーディネート看護師育成・支援事業」を開始しました。今回は佐賀県でのこれまでの地域医療連携における取り組みと、今後の展望についてご紹介します。

昨今、高齢者が手術を受ける割合は高くなり、糖尿病を有する患者の割合も増えている。その結果、慢性合併症や随伴疾患のために、治療効果に加えて、周術期におけるリスク管理が重要な課題となってきた。
基幹病院は、質の高い医療を地域に提供しなければならない。手術件数の増加と質向上が求められる中で、在院日数の短縮により手術までの準備期間も短くなり、患者はその間に手術に必要な説明を受け、術前評価を集中して受けることになる。手術に対する精神的・身体的準備が十分できていない場合もある。また、入院後の術前検査や麻酔科医の評価で問題があった場合、血糖コントロール等の再評価のために予定されていた手術が中止となることも生じる。そのような背景から、安全で効率的な手術を担保するために、全国的に周術期の管理センターが院内に設置されつつある。
本稿では、岐阜大学医学部附属病院を例として、術前の診療科連携の観点からその意義を解説したい。