日本糖尿病協会

TDJ活動レポート

TDJ活動レポート~JALホノルルマラソン~ 2017年12月10日(日)

Last Update:2017年12月26日

TDJ活動レポート 2017年12月

JALホノルルマラソン 2017年12月10日(日)

今回、TDJのメンバーとして参加させて頂きました神戸大学糖尿病内分泌内科の医師の芳野啓です。減量目的でマラソンの大会に何度か参加していましたが小学生の時にテレビで観たホノルルマラソンに走りたいと漠然と思っていました。そんな中、当院通院中の1型糖尿病の患者さん(Y.Iさん)がホノルルマラソンに参加すること、また糖尿病協会にランニング・ウォークのチームがありホノルルマラソンにも参加していることを知り、Y.IさんとともにTDJのメンバーとしてホノルルマラソンに参加させて頂くことになりました。

4月にエントリー後、ハーフマラソン3回、32kmマラソン1回、フルマラソン1回(神戸マラソン4時間24分)とそれなりの準備をして臨みましたが、結果は5時間10分でフルマラソン5回目にしてまさかのワースト記録更新でした。

途中、救命活動に携わったこともありましたが人混み、暑さ、坂道で思ったとおりのペースで走れず、何度も心が折れそうになりながらもなんとかゴールしました。当初の目標の4時間30分以内どころか、途中で歩いてしまい、完走するという最低限の目標だけなんとかクリアできました。当日走っていた浅田真央ちゃんは80点の出来とのことですが、私は60点です。メンタルの弱さ、時差、前日までのアルコールの影響かわかりませんが体調整えて一から出直しです。

Y.I.さんは、日頃からSAP療法(Sensor Augmented Pump、持続血糖測定機器つきインスリンポンプ)にて治療をしており、マラソン当日もそれを装着してつけて走りました。タイムは4時間25分で私よりも40分以上も速くゴールしました。Y.Iさんは日頃の血糖も良好にコントロールでき糖尿病でない人と変わらない数値です。TDJ代表の南昌江先生がおっしゃられている『糖尿病だからと言って出来ないことはありません。自己管理さえきちんとすれば、病気がない人より、むしろ元気で有意義な人生を送ることができるのです』をY.Iさんは地で行っています。

貴重な経験ができた一方、今回厳しい現実に直面する出来事がありました。

最初にも書きましたがマラソンの途中に救命活動に携わりました。15km手前を走っていたところ、倒れている人がおり、何人かのランナーが立ち止まって取り囲んでいました。一度通り過ぎましたが、やはり気になり引き返しました。意識はなく、呼吸もしていなさそう、脈も触れず心肺停止と判断し胸骨圧迫(心臓マッサージ)を開始、AED(自動体外式除細動器)もお願いしました。そこに居合わせたランナー達と即席チームを作り救命処置を行いましたが普段の講習や病院とは環境が大きく異なり、胸骨圧迫を続けることや電気ショック時に身体から離れてもらう指示をするので精一杯でした。2回目の電気ショックで心拍再開を確認後に、救急隊に引き継ぎました。その後の安否はわからず気になるところですが倒れたのは50歳代男性の日本人の方で既往に狭心症があり、こうなる前にできることはなかったのか、また救命活動もあれすべきだった、これすべきだったと反省しながら悶々としながらのランニング再開でした。また帰国便の機内でも急病人の治療に携わりました。幸い命に関わる病態ではなかったですがやはりマラソン後の方でした。

第1回のホノルルマラソンは、1973年12月、心臓病の医師のJ.スキャッフ氏の提唱の下、開催されました。スキャッフ医師は、「長距離をゆっくり走る事は、心臓病の予防と治療に非常に効果的である」という医学的な観点から、マラソン大会の開催を提唱しました。健康維持、増進のために日常生活の中にランニングを取り入れ、最終的には自分のペースでフルマラソンを完走するという大会の精神は、タイム制限のない大会として今日まで継続しています。なにかしらの疾患を持っているからとマラソン等の運動やその他の活動を必ずしも制限する必要はありません。ただし、マラソンを走るということは一定の負荷がかかります。マラソン大会の主催側からも毎回アナウンスはあるとおり、体調を整えて、無理せず個々のペースで臨んで頂ければと思います。

ホノルルでマラソンを走るというとても素晴らしい経験を糖尿病に携わる皆様にも是非経験してもらえばと思います。

神戸大学糖尿病内分泌内科
芳野 啓

 

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