日本糖尿病協会

月刊誌「さかえ」

月刊糖尿病ライフ さかえ

Last Update:2008年8月1日

さかえバックナンバー 2008年08月号 【 情報を見る眼力 】

百科事典

クリニック院長室の書棚が満杯になったため、新しく書庫を設けました。真新しい空の書棚はなんとなく不安定で寂しそうに見えます。そんなことを考えていると、ふと子どものころの実家の本棚を思い出しました。下の2段にはいかにも重そうな百科事典、全20巻以上がずっしりと並んで、安物の本棚に安定感を与えていたものです。強制されてする勉強(学校の宿題がその最たるもの)は大きらいでしたが、百科事典をパラパラとめくるのは結構好きで、記事中に目新しい言葉を見つけてはその項目に飛んで、次々と読み散らかしていました。今流にいえば、ウエブサーフィンならぬ百科事典サーフィンですね。

時代は変わり百科事典もITが取り入れられ、電子媒体版が主流になっているようです。紙では全20~30巻もある重量物が、小さなディスク1枚に余裕で収まって、紙では不可能だった音や動画をも含み、検索やハイパーリンクまで実現してしまうのですから、初めて見たときには感動しました。今ではインターネット全体が巨大な百科事典のようなものともいえますが、何度も書いてきましたように、無料で容易に得られる情報は、その信頼性を自分で的確に見極めて取捨選択することが求められます。

さて、インターネット上で無料で利用できるフリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」というサイト(http://ja.wikipedia.org/)をご紹介しましょう。

ウィキペディアの目的は、「信頼されるフリーな百科事典を――それも、質も量も史上最大の百科事典を創り上げること」で、基本方針に賛同する方なら誰でも記事を編集したり新しく作成したりできます(ウィキペディアより引用)。つまり、みんなで知恵を持ち寄って百科事典を作り上げようというプロジェクトです。糖尿病や医学に関する内容も含め、非常に多くの情報が集まっていますが、誰でも書き込めますので、情報の信頼性には注意を払う必要があります。ただし、かなり明確な基本指針が定められており、それに基づいて編集や書き込みがなされ、編集過程も全て公開されていますので、匿名掲示板などとは違ってある程度信頼するに足りると思います。

ところで、誰でも書き込めるとなると、つい自分(あるいは自分の所属する組織)に都合のいいことや、対立相手の立場を悪くするようなことを書きたくなるものです。実は「ウィキスキャナ(WikiScanner)」というサイト(http://wikiscanner.virgil.gr/index_JA.php)によって、そのような行為が白日の下にさらされるようになりました。これは、ウィキペディアの情報の信頼性を確認する手段としても役立ちます。


かぎもとクリニック 鍵本伸二

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