日本糖尿病協会

最新のお知らせ

SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation

Last Update:2019年8月30日

策定:2014年6月13日
改訂:2014年8月29日
2016年5月12日
2019年7月23日
2019年8月6日

我が国で最初のSGLT2阻害薬は2014年4月17日に発売され、現在は6成分7製剤が臨床使用されている。本薬剤は新しい作用機序を有する2型糖尿病薬として発売され、治験の際に低血糖など糖尿病薬に共通する副作用に加えて、尿路・性器感染症など本薬剤に特徴的な副作用が認められていた。加えて、本薬が広汎で複雑な代謝や循環への影響をきたしうることから、重篤なものを含む多様な副作用発症への懸念が持たれていた。実際、発売当初以下に述べるような副作用や有害事象が数多く報告された。それを踏まえ、「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」が発足し、2014年6月13日に「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」を策定し公表した。その後の新たな副作用報告も踏まえ2014年8月29日に改訂を加えた。また、発売から3ヵ月間に高齢者(65歳以上)に投与する場合には、全例の特定使用成績調査が定められ、高齢者糖尿病における副作用や有害事象の発生率や注意点についての一定のデータが得られている。この高齢者特定使用成績調査の結果は、治験中に見られた有害事象や副作用の内容および頻度と大きく異なるものではなかった。
SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の配合薬が2017年9月以降、2型糖尿病治療薬として各社から順次発売され、臨床使用されている。SGLT2阻害薬に関する本Recommendationの多くの留意点は、これらの配合薬についても該当する。
また、2018年12月以降、一部のSGLT2阻害薬が成人1型糖尿病患者におけるインスリン製剤との併用療法として適応を取得したが、ケトアシドーシスのリスク増加が報告されている。また、海外では、SGLT2阻害薬の成人1型糖尿病への適応申請に対し、欧州医薬品庁(EMA)ではBMIが27kg/m2以上に限定した承認であり、米食品医薬品局(FDA)では承認が見送られた。こうした事実を重く受け止め、1型糖尿病患者への使用に際しては、十分な注意と対策が必要である。本委員会としては、これらの情報をさらに広く共有することにより、副作用や有害事象が可能な限り防止され、適正使用が推進されるよう、Recommendationをアップデートする。

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Recommendation

  1. 1型糖尿病患者の使用には一定のリスクが伴うことを十分に認識すべきであり、使用する場合は、十分に臨床経験を積んだ専門医の指導のもと、患者自身が適切かつ積極的にインスリン治療に取り組んでおり、それでも血糖コントロールが不十分な場合にのみ使用を検討すべきである。
  2. インスリンやSU薬等インスリン分泌促進薬と併用する場合には、低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる(方法については下記参照)。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。
  3. 75歳以上の高齢者あるいは65歳から74歳で老年症候群(サルコペニア、認知機能低下、ADL低下など)のある場合には慎重に投与する。
  4. 脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬の併用の場合には特に脱水に注意する。
  5. 発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する。
  6. 全身倦怠・悪心嘔吐・腹痛などを伴う場合には、血糖値が正常に近くてもケトアシドーシス(euglycemic ketoacidosis; 正常血糖ケトアシドーシス)の可能性があるので、血中ケトン体(即時にできない場合は尿ケトン体)を確認するとともに専門医にコンサルテーションすること。特に1型糖尿病患者では、インスリンポンプ使用者やインスリンの中止や過度の減量によりケトアシドーシスが増加していることに留意すべきである。
  7. 本剤投与後、薬疹を疑わせる紅斑などの皮膚症状が認められた場合には速やかに投与を中止し、皮膚科にコンサルテーションすること。また、外陰部と会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)を疑わせる症状にも注意を払うこと。さらに、必ず副作用報告を行うこと。
  8. 尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発見に努めること。問診では質問紙の活用も推奨される。発見時には、泌尿器科、婦人科にコンサルテーションすること。

副作用の事例と対策

重症低血糖

引き続き重症低血糖の発生が報告されている。重症低血糖のうちインスリン併用例が多く、SU薬などのインスリン分泌促進薬との併用が次いでいる。DPP-4阻害薬の重症低血糖の場合にSU薬との併用が多かったことに比し、本剤ではインスリンとの併用例が多いという特徴がある。SGLT2阻害薬による糖毒性改善などによりインスリンの効きが急に良くなり低血糖が起こっている可能性がある。このように、インスリン、SU薬又は速効型インスリン分泌促進薬を投与中の患者へのSGLT2阻害薬の追加は重症低血糖を起こすおそれがあり、予めインスリン、SU薬又は速効型インスリン分泌促進薬の減量を検討することが必要である。また、これらの低血糖は、必ずしも高齢者に限らず比較的若年者にも生じていることに注意すべきである。
2型糖尿病患者では、インスリン製剤との併用する場合には、低血糖に万全の注意を払ってインスリンを予め相当量減量して行うべきである。1型糖尿病患者では、インスリンの過度の減量によりケトアシドーシスリスクが高まる可能性に留意し、慎重に減量する(方法については下記参照)。

  • 1-a) 血糖コントロール良好(HbA1c<7.5%)な場合、開始時に基礎および追加インスリンを10~20%前後を目安に減量することを検討する。
  • 1-b) 血糖コントロール良好でない(HbA1c≧7.5%)場合、服薬開始時の基礎および追加インスリンは減量しないかあるいはわずかな減量にとどめる。
  • 2-a) 経過中、血糖コントロールが改善し低血糖が顕在化した場合は、血糖自己測定や持続血糖モニタリングの結果に応じ、患者自身で責任インスリン量をすみやかに減量できるよう指導する。
  • 2-b) ただし、上記の場合でも患者にはインスリンを極端に減量することは控えるよう指導する。特に基礎インスリンの減量は治療前の20%を越えることは避け、慎重に減量すべきである。

また、SU薬にSGLT2阻害薬を併用する場合には、DPP-4阻害薬の場合に準じて、以下の通りSU薬の減量を検討することが必要である。

  • グリメピリド2mg/日を超えて使用している患者は2mg/日以下に減じる
  • グリベンクラミド1.25mg/日を超えて使用している患者は1.25mg/日以下に減じる
  • グリクラジド40mg/日を超えて使用している患者は40mg/日以下に減じる

ケトアシドーシス

1型糖尿病への適応が承認されたことに伴い、ケトアシドーシスの報告が増加している。インスリンの中止、極端な糖質制限、清涼飲料水多飲などが原因となっており、服薬開始時には十分な問診を行い、ケトアシドーシスやその初期症状を繰り返す場合や糖質制限が疑われる場合は投与を控えるべきである。1型糖尿病ではインスリンポンプ使用者のポンプトラブルや予測低血糖マネージメント(PLGM)機能による基礎インスリンの中断が原因として重要であり注意を要する。臨床試験の報告では、アルコール多飲者、感染症や脱水など、女性、非肥満・やせ(BMI<25)などでのケトアシドーシスの増加が報告されている。SGLT2阻害薬を服用していると、インスリンが中断されても血糖上昇を伴わないままケトアシドーシスへと進行するため発見が遅れ、重症化させてしまう。また、通常の糖尿病性ケトアシドーシスと異なり、治療初期より十分なブドウ糖補充が必須である。患者には全身倦怠感・悪心嘔吐・腹痛などの症状を十分に教育した上で、ケトアシドーシスが疑われる場合はすみやかに専門医を受診するよう指導する。

脱水・脳梗塞等

これまでの大規模臨床試験や市販後調査の結果からは、SGLT2阻害薬が脳梗塞の発症数を増加させるエビデンスはないが、SGLT2阻害薬投与により初期には通常体液量が減少するので、適度な水分補給を行うよう指導すること、脱水が脳梗塞など血栓・塞栓症の発現に至りうることに改めて注意を喚起する。急性腎障害を引き起こすことがあり、特に利尿薬、ACE阻害薬、ARB、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を併用する場合には注意が必要である。75歳以上の高齢者あるいは65歳から74歳で老年症候群(サルコペニア、認知機能低下、ADL低下など)のある場合や利尿剤併用患者等の体液量減少を起こしやすい患者に対するSGLT2阻害薬投与は、注意して慎重に行なう、特に投与の初期には体液量減少に対する十分な観察と適切な水分補給を必ず行い、投与中はその注意を継続する。脱水と関連して、高血糖高浸透圧性非ケトン性症候群も報告されている。また、脱水や脳梗塞は高齢者以外でも認められているので、非高齢者であっても十分な注意が必要である。脱水に対する注意は、SGLT2阻害薬投与開始時のみならず、発熱・下痢・嘔吐などがある時ないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には万全の注意が必要であり、SGLT2阻害薬は必ず休薬する。この点を患者にも予めよく教育する。
また、脱水がビグアナイド薬による乳酸アシドーシスの重大な危険因子であることに鑑み、ビグアナイド薬使用患者にSGLT2阻害薬を併用する場合には、脱水と乳酸アシドーシスに対する十分な注意を払う必要がある(「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation」http://www.jds.or.jp/)。

皮膚症状

皮膚症状は掻痒症、薬疹、発疹、皮疹、紅斑などが副作用として多数例報告されているが、非重篤のものが大半を占める。全ての種類のSGLT2阻害薬で皮膚症状の報告がある。皮膚症状が全身に及んでいるなど症状の重症度やステロイド治療がなされたことなどから重篤と判定されたものも報告されている。皮膚症状はSGLT2阻害薬投与後1日目からおよそ2週間以内に発症している。SGLT2阻害薬投与に際しては、投与日を含め投与後早期より十分な注意が必要である。あるSGLT2阻害薬で皮疹を生じた症例で、別のSGLT2阻害薬に変更しても皮疹が生じる可能性があるため、SGLT2阻害薬以外の薬剤への変更を考慮する。いずれにせよ皮疹を認めた場合には、速やかに皮膚科医にコンサルテーションすることが重要である。特に粘膜(眼結膜、口唇、外陰部)に皮疹(発赤、びらん)を認めた場合には、スティーブンス・ジョンソン症候群などの重症薬疹の可能性があり、可及的速やかに皮膚科医にコンサルテーションするべきである。
また、海外ではSGLT2阻害薬と外陰部と会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)との関連性が指摘され、死亡例も報告されている。フルニエ壊疽の進行は早いため、早急に外科的治療および抗生剤治療を開始する必要がある。診断が遅れると死に至るリスクがあるため、外陰部、会陰部、肛門周囲の発赤、腫脹、疼痛には注意を払い、フルニエ壊疽が疑われる場合には、外科的な対応が可能な皮膚科医などに可及的速やかにコンサルテーションするべきである。

尿路・性器感染症

治験の時からSGLT2阻害薬使用との関連が認められており、1型糖尿病の治験においても、性器感染症の明らかな増加が報告されている。これまで、多数例の尿路感染、性器感染症が報告されている。尿路感染症は腎盂腎炎、膀胱炎など、性器感染症は外陰部膣カンジダ症などである。全体として、女性に多いが男性でも報告されている。投与開始から2,3日および1週間以内に起こる例もあれば2ヵ月程度経って起こる例もある。腎盂腎炎など重篤な尿路感染症も引き続き報告されている。尿路感染・性器感染については、質問紙の活用を含め適宜問診・検査を行って、発見に努めること、発見時には、泌尿器科、婦人科にコンサルテーションすることが重要である。

以上、SGLT2阻害薬が発売されてから5年を超える期間に報告された副作用情報や高齢者の特定使用成績調査の結果を踏まえ、その使用にあたっての重要な注意点についてアップデートを行った。特定使用成績調査の結果は、75歳以上では安全性への一定の留意が必要と思われる結果であった。本薬剤は適応やエビデンスを十分に考慮した上で、添付文書に示されている安全性情報に十分な注意を払い、また本Recommendationを十分に踏まえて、適正使用されるべきである。

「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」

長崎大学病院内分泌・代謝内科 阿比留教生
近畿大学医学部 内分泌・代謝・糖尿病内科 池上博司
京都大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科学 稲垣暢也 
国立国際医療研究センター 糖尿病研究センター 植木浩二郎 
川崎医科大学・川崎医療福祉大学 加来浩平 
東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科 門脇孝 
東京大学大学院医学系研究科 皮膚科学 佐藤伸一
関西電力病院 清野裕 
旭川医科大学 内科学講座 病態代謝内科学分野 羽田勝計 

以上

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