糖尿病患者の約6割が心理的な問題を抱えているといわれている一方で、メンタル面で専門の訓練を受けた糖尿病療養指導士の支援を受けているのはその約3割との報告があります。特に糖尿病でインスリンを使用している人は、うつ病など悲観的な心理的転帰のリスクが高いことも報告されています。よって患者への心理的支援介入の有無がQOLを維持した糖尿病療養の成功を左右すると言っても過言ではありません。しかし本邦において現状では療養指導士が医学的管理と同程度に心理的支援について学ぶシステムはありません。そこで今後、療養指導の困難例に対峙したとき、心理的支援による打開も想起できるよう、まずは糖尿病療養スタッフにその意義と治療としての可能性についてご承知いただきたく本企画を立案いたしました。
（岐阜大学大学院医学系研究科 糖尿病・内分泌代謝内科学　堀川幸男）

糖尿病は医療のサポートを受けて自分自身で治療する（自己管理をする）病気です。患者さんの教育が極めて重要で、専門職種が綿密な連携を保ち、療養指導に当たる多職種チームアプローチが必要となります。その役割を果たすために2016年に栃木県糖尿病療養指導士認定機構（CDE-Tochigi）が発足しました。CDE-Tochigiでは、日本糖尿病療養指導士（CDEJ）の資格が取得できる5職種（看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士）のほか、保健師、准看護師、栄養士、歯科衛生士、介護福祉士、健康運動指導士、臨床工学士、視能訓練士、臨床心理士、メディカルクラーク（医療事務）などが糖尿病療養指導士の資格を取得できるようにしました。発足6年目を迎え、現在633名の栃木県糖尿病療養指導士が誕生しています。

糖尿病腎症が原因で透析導入となる患者さんが増加している現状において、透析患者さんの血糖コントロールは、とても重要です。特に細小血管症である糖尿病網膜症や神経障害、大血管症である心筋梗塞や脳梗塞などの糖尿病腎症以外の合併症において、それ以上進展させないよう良好な血糖コントロールを保つ必要があります。そこで透析患者さんの糖尿病治療の中で薬物療法をどのように進めるべきか、体内での薬剤の排泄を踏まえて考えていきます。

運動療法は、周知の通り食事療法と並び、糖尿病治療の柱の1つです。糖尿病の運動療法として週150分以上の有酸素運動と週2、3日のレジスタンストレーニングを組み合わせて行うことがよいとされていますが、日本糖尿病学会の委員会が行った調査1）によると、運動している患者さんは約半数にとどまっていたことが明らかになっています。また、同調査では、運動していない理由として、時間のなさが4割、運動時の痛みが2割に上ることを報告しています。血糖コントロールの改善を目的に運動を継続するためには、患者さんの状況に合わせた運動方法を提供すること、つまり運動方法の多様性が求められているものといえます。
本稿では、よく提示される運動内容が陸上における運動である現状を踏まえ、運動方法の1つとして運動環境を水中に移すことに焦点を置き、陸上と異なる水中環境の特性や水中運動における利点について話を進めていきます。