2021年 Vol9. No.4(第42号)
2021年2月28日発行
特集

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特集
ウィズ・コロナ時代の糖尿病療養指導
いまだ終息の気配が見られない新型コロナウイルス感染症。感染対策に、日々多忙のことと思います。この新しい感染症は、私たちの生活を根本から変えてしまいました。その影響は医療現場にもおよび、糖尿病療養指導に対しても変革が求められています。
今回の特集では「ウィズ・コロナ時代の糖尿病療養指導」として、この過酷な状況の中でクリニック診療・食事療法・災害対策・感染症予防・運動療法・メンタルサポートはどうあるべきなのかを考え、実践されている先生方にその取り組みについて教えていただきました。パンデミックは今後も繰り返し起こってくることが予想されます。
皆さま方の備えに、大きな参考となることと思います。
(福岡大学筑紫病院 内分泌・糖尿病内科 小林邦久)
ウィズ・コロナ時代の療養指導の注意点
前田 泰孝(南昌江内科クリニック/南糖尿病臨床研究センター)…7P
ウィズ・コロナ時代の食事療法
山本 真吾(愛媛県立中央病院)…13P
ウィズ・コロナ時代の糖尿病災害対策と療養支援
本田 千晶(国保水俣市立総合医療センター)…17P
ウィズ・コロナ時代の呼吸器感染症予防
宮下 修行ほか(関西医科大学)…22P
ウィズ・コロナ時代の運動不足解消法
橋爪 真彦(有馬温泉病院)…27P
ウィズ・コロナ時代の心の負担と守りかた
波夛 伴和(九州大学病院)…32P
連載「地域医療の現場から」
糖尿病療養を支援できる地域の人材を育てるのはCDEの役割!
― 八幡浜市糖尿病サポーター制度―
酒井 武則(市立八幡浜総合病院)…36P
連載「地域医療の現場から」
糖尿病療養を支援できる地域の人材を育てるのはCDEの役割! ― 八幡浜市糖尿病サポーター制度―
地方の中核病院は、人口減少・少子高齢化に加え、医師や看護師不足など医療資源縮小の影響で、既存の診療体制に歪みが出てきています。私たちの病院の位置する愛媛県八幡浜市はまさにその最先端を走る地域で、2007年に医療崩壊を経験、病診連携の積極的な運用でこの難局に挑んでいます。
この大規模な病診連携を維持するためには、連携先にも糖尿病の療養指導ができるスタッフの育成が不可避となります。しかし、プライマリーケアの現場スタッフが糖尿病療養指導士(CDE)を取得することは困難を極め、さらに高齢化を迎えた地域では介護現場にも糖尿病患者で困る事例も多く、介護スタッフにも一定の糖尿病に関する知識の普及が求められていますが、既存の仕組みでは対応ができない現状でした。
そこで、地域に糖尿病患者を見守ることができる人材を育成することを目的に、療養指導ではなく療養支援という位置づけで糖尿病サポーター(八幡浜市糖尿病サポーター:YDS)制度を考案し運用を開始していますのでその現状と問題点をご紹介いたします。
連載「糖尿病をめぐる診療科リレー」
糖尿病は心不全ステージ分類でどれでしょう?
~より早く・あきらめず・ためらわず~
岸 拓弥(国際医療福祉大学)…42P
連載「糖尿病をめぐる診療科リレー」
糖尿病は心不全ステージ分類でどれでしょう?~より早く・あきらめず・ためらわず~
2型糖尿病は、心筋梗塞既往例と同じレベルで冠動脈によるイベント発症リスクを有し、正常例に比べて冠動脈疾患合併が有意に多いです。さらに、糖尿病患者さんに心不全の合併は非常に多く見られます。フラミンガム研究において、糖尿病患者さんの心不全発症リスクは非糖尿病患者さんに比べて、男性で2倍、女性では5 倍を超えています。その後の研究でも、糖尿病患者さんにおける心不全は非糖尿病患者さんよりも高頻度であったと報告されています(11.8% vs. 4.5%)。また、耐糖能異常の段階で既に心不全の発症リスクは1.2 ~ 1.7倍に増加します。
このように、心不全発症の重要なリスクである糖尿病を有する患者さんの中でも、高齢・罹病期間・インスリン使用・冠動脈疾患の既往・慢性腎臓病(血清クレアチニンの上昇・微量アルブミン尿)・そして血糖コントロール不良は心不全発症の独立した危険因子です。一方で、心不全患者さんにおいても糖尿病の合併は多いです。慢性心不全では25%、急性心不全では42%の患者さんに糖尿病が認められます。
これらを踏まえ、「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」において、糖尿病はステージA(リスクステージ)における代表的な疾患に位置づけられています。
「糖尿病診療update」
糖尿病と動脈硬化~頸動脈エコーって知っていますか?
手塚 裕子(成田センタークリニック)…50P
「糖尿病診療update」
糖尿病と動脈硬化~頸動脈エコーって知っていますか?
新型コロナウイルス感染症の流行により、糖尿病患者さんの受診が減ったと感じている医療従事者の皆さんも多いのではないでしょうか。糖尿病専門クリニックの当院でも、やはり患者さんの受診者数は例年同月よりかなり減少していました。受診された患者さんの中でも、コントロールが悪化している方に伺うと「外で運動することが少なくなった」「仕事での活動量が多かったのに、自宅待機になって1日の歩数が減った」など、これまでの生活習慣とは違う状況により、糖尿病療養への影響も出ているようです。このように生活習慣と深く関わりのある糖尿病と、これも生活習慣と関わりの深い「動脈硬化症」、今回は特に頸動脈について取り上げたいと思います。
低血糖を再認識しよう~
押さえておきたい低血糖のイロハ~
堀井 剛史(北里大学)…56P
「糖尿病診療update」
低血糖を再認識しよう~押さえておきたい低血糖のイロハ~
2020年11月現在、血糖降下薬は7種類の経口薬と2種類の注射薬の中から、患者さんの状態に合わせて薬剤を選択することができます。それぞれの薬剤群は血糖降下作用を持ち、最終的に血糖を下げることを目的としていますが、そこに至るまでのプロセスは異なる作用機序を示すため、DPP-4阻害薬による類天疱瘡やSGLT2阻害薬によるケトーシスなど、特徴的な副作用を持ち合わせています。一方で、全ての血糖降下薬が共通で持つ副作用であり、糖尿病医療を実践していく上で最も注意すべきものは、低血糖であるといえます。糖尿病医療に関わる我々は、新しい薬剤群が使用できるようになると新しい効果や特徴的な副作用に注目しがちですが、質の高い糖尿病医療を提供するためには、低血糖を最小限に抑える取り組みを欠かすことはできません。
そこで本稿では、低血糖についての基本的な内容から予防策までを紹介したいと思います。
症例クイズ
働き世代で時間のとれない2型糖尿病患者への運動指導
高橋 礼奈(臼杵市医師会立コスモス病院)…47P
インフォメーション
糖尿病カンバセーション・マップ™
ファシリテータートレーニング オンライン講習会のお知らせ…46P
「腎機能チェックツール」のご案内…62P
次号予告/編集後記/購読確認票…64P
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