2020年 Vol9. No.1(第39号)
2020年5月28日発行
特集

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特集
熱中症の予防のために
毎年のように史上最高気温更新のニュースが報道され、地球温暖化をますます実感するようになってきています。この環境の中で、糖尿病患者さんは血糖コントロール不良から、また併発症や不適切な薬物療法・運動療法により、脱水になりやすくなります。そこにさらに暑さが加わると熱中症となる例が増加することとなります。
今回の特集では、熱中症の病態・治療やそれを予防するための食事、薬剤の保管・管理、さらには運動療法における注意点まで、各分野のエキスパートにご執筆いただきました。新型コロナウイルス感染症の影響で引きこもりがちになってしまった患者さんの体調管理・回復のために、極めて示唆に富む点が多いと思われます。これからの暑い時季を乗り切っていただくための療養指導に役立てていただきたいと思います。
(福岡大学筑紫病院 内分泌・糖尿病内科 小林邦久)
そもそも熱中症とは何でしょうか?
佐々木 伸浩(日本赤十字社 福岡赤十字病院)…5P
熱中症を予防する療養生活
梶野 美保(九州大学病院)…10P
暑い夏を乗り切るための食事
渡邉 啓子(中村学園大学)…12P
暑い季節において注意すべき薬剤について
武藤 達也(名鉄病院)
朝倉 俊成(新潟薬科大学)…17P
暑い夏の運動療法
山本 泰暉(福岡大学)
上原 吉就(福岡大学)…21P
連載「地域医療の現場から」
地域システム構築とハイリスクアプローチによる糖尿病重症化予防
~大分県臼杵市の取り組み~
近藤 誠哉(臼杵市医師会立コスモス病院)…28P
連載「地域医療の現場から」
地域システム構築とハイリスクアプローチによる糖尿病重症化予防~大分県臼杵市の取り組み~
大分県臼杵市は、県東南部に位置する人口3万8500人の地方都市です。市の人口は減少傾向にあり、2019年4月時点の65歳以上人口比率は39.3%と高齢化も進んでいます。2009年度の市の国民健康保険医療費(42万4千円/人)は全国平均(30万9千円/人)を大きく上回り、県内でも最上位を占め、その適正化が大きな課題となっていました。生活習慣病の有病率もいずれも県内上位を占め、糖尿病腎症による新規透析導入も増加の一途を辿っていました。これに対し2010年より県の事業の一環として、医療(医師会)と行政(保健所、市役所)の連携協働による「臼杵市糖尿病等生活習慣病対策ネットワーク推進会議」(以下、対策推進会議)が設立され、糖尿病を中心とした生活習慣病の重症化予防を地域ぐるみで目指すこととなりました。2015年からは、地域の歯科医師会、薬剤師会、地域の糖尿病療養指導士会、ならびに協会けんぽも参加し、医療、行政、保険者の垣根を越えた地域一体型の糖尿病連携事業を展開しています。
連載「糖尿病をめぐる診療科リレー」
睡眠呼吸障害と糖尿病
澤渡 浩之(広島大学大学院医系科学研究科)
安藤 眞一(九州大学病院)…34P
連載「糖尿病をめぐる診療科リレー」
睡眠呼吸障害と糖尿病
睡眠呼吸障害は、睡眠中に気道の閉塞や呼吸中枢の異常が起きることで呼吸困難になり、間歇的な低酸素血症と覚醒を引き起こす病気です。この睡眠呼吸障害のうち、特に閉塞性の睡眠呼吸障害は一般住民においても多く見られ、肥満や小顎、また加齢などがリスク因子として挙げられます。睡眠呼吸障害は、2型糖尿病患者さんにおいては約半数の患者さんに見られると推測され、その病態から血糖コントロールに悪影響を及ぼすことが示唆されています。睡眠呼吸障害に対する十分な治療介入は、2型糖尿病のコントロールの改善に対して一定の効果を示しています。このことからも、2型糖尿病患者さんにおける睡眠呼吸障害対策は重要だと考えられます。また、睡眠呼吸障害の治療法として最も多く行われている持続陽圧呼吸療法に関しては、マスク治療に対するコンプライアンスが非常に重要になってきます。本稿では、睡眠呼吸障害と2型糖尿病に関する知見に関して、疫学的な方面から臨床に関する事柄まで概説していきたいと思います。
「糖尿病診療update」
糖尿病と就労の両立支援
中島 英太郎(中部ろうさい病院)…42P
「糖尿病診療update」
糖尿病と就労の両立支援
我が国では、定年後再雇用の促進や定年年齢上昇により、就労者全体の高齢化が進み、糖尿病を抱える就労者の増加が予想されています。糖尿病=高血糖自体は個々の労働者の業務遂行能力に直接影響を与えることは一般的にありませんが、慢性的な高血糖状態は将来深刻な糖尿病合併症へ進展し、視力障害や人工透析等が業務遂行能力に悪影響を及ぼして就業の継続や復職を難しくします。また、この高血糖の代謝失調は血糖正常化したのちも、長期にわたり悪影響が残ることが知られています。糖尿病慢性合併症は、良好な血糖管理を維持できれば予防可能であり、より早期からの継続治療が大切です。就労糖尿病患者さんが真摯に治療に取り組むためには、治療と仕事との両立が円滑に行われていることも重要です。このために、仕事をしている糖尿病患者さんと主治医、そして会社にいる産業医を含めた産業保健スタッフや上司の方が連携して治療支援を行っていくことが望まれます。
栄養の知識を献立に活かす!レシピコンテストを通して考える管理栄養士の役割
亀山 亜希夫(川崎市立井田病院)
田村 清美(公益財団法人東京都保健医療公社)
北谷 直美(関西電力病院/日本病態栄養学会)…48P
「糖尿病診療update」
栄養の知識を献立に活かす!レシピコンテストを通して考える管理栄養士の役割
近年の管理栄養士を取り巻く環境は、栄養サポートチームをはじめとしたチーム医療への参画、栄養管理計画書の作成など、臨床栄養管理業務が増加している状況の中、現在の医療施設における給食業務委託率は半数を超え、病院栄養士が給食管理業務に関わる時間は減少しています。
第21回日本病態栄養学会年次学術集会において、「地域の伝統を生かした糖尿病食」としてレシピコンテストが開催され、管理栄養士の給食管理から栄養管理・患者教育へつなげていくという熱い思いと改めて給食管理業務や栄養管理業務を考える機会を得ることができたため、紹介していきたいと思います。
症例クイズ
1型糖尿病患者でSGLT2阻害薬を服用しているインスリンポンプ使用患者への対応について
森 貴幸(株式会社大和調剤センター)…57P
インフォメーション
「糖尿病連携手帳」第4版を発行…40P
腎機能(eGFR)チェックツールを公開…54P
お家でエクササイズ動画のご案内…56P
新型コロナウイルス感染拡大による日糖協事業の中止のお知らせ…59P
インスリン注入器使用時の「空打ち」について…60P
DM Ensemble 年間購読申込書…63P
糖尿病療養指導 鈴木万平賞 推薦募集のお知らせ…表3
次号予告/編集後記/購読確認票…64P
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