2019年 Vol8. No.3(第36号)
2019年11月28日発行
特集

…4P
特集
血糖変動をどうみるか
~ CGM、FGM の活用方法を探る~
日常診療でCGMが使用可能となってから9年が経過しました。機器の進化とともに検査手技は簡便となり、血糖変動を可視化しながら治療を最適化することが、より容易に行えるようになりました。こうした治療技術の進歩は患者さんに大きな恩恵をもたらしていますが、一方で、これらの機器には精度やタイムラグ、皮膚トラブルなど問題などもあり、有用性を最大限に発揮させるためには、医療者が十分な知識を持ち、的確な支援を行う必要があります。本特集がそのための一助となりますようにと願っております。
(岡山済生会総合病院 糖尿病センター 中塔辰明)
AGPを用いたCGM、FGMの活用
菅沼 由佳(西埼玉中央病院)
高橋 紘(東京慈恵会医科大学附属病院)
西村 理明(東京慈恵会医科大学附属病院)…5P
CGM・FGMデータをどう活用するか
―精度の問題を含めて―
手塚 裕子(医療法人社団DM会 成田センタークリニック)…11P
Intermittent-scanning CGM(Flash Glucose Monitoring)を糖尿病療養指導に活かすコツ
廣田 勇士(神戸大学医学部附属病院)…18P
CGM-FGM時代のカーボカウント活用法
髙橋 絢子(岡山大学病院)…24P
CGMセンサーによる皮膚トラブルとその対処も含めて
黒田 暁生(徳島大学先端酵素学研究所)…30P
トピックス 日本糖尿病協会適正化委員会の取り組み
…33P
連載「地域医療の現場から」
「糖尿病死亡ワーストワン」がもたらす地域医療の革新
松久 宗英(徳島大学先端酵素学研究所)…36P
連載「地域医療の現場から」
「糖尿病死亡ワーストワン」がもたらす地域医療の革新
徳島県は1993年から厚生労働省の統計による糖尿病関連死亡率のワーストワンとなり、その後数年を除き、そこが定位置となっています。このため、糖尿病の克服は県の最大の健康課題と認識され、2005年には、県と県医師会が「糖尿病克服宣言」を発表し、具体的な糖尿病対策が始まりました。私の所属する徳島大学の糖尿病臨床・研究開発センターも、その対策の一端を担うため2010年に設立されました。その対策の本幹は、啓発活動や特定健診などを介したポピュレーションアプローチと糖尿病医療連携の推進、さらには糖尿病に関わる医療人材の育成にあります。最近では、国の施策として進められる糖尿病腎症重症化予防にも力を入れ対策を推進しています。
近年、国内では医療の通信情報技術(Informed Communication and Technology: ICT)化が進められ、ICTを活用した地域医療連携やオンライン診療などへの期待が高まっています。徳島県でも、「阿波あいネット」と呼ばれるシステムが普及しつつあり、近未来の糖尿病診療の形を模索しております。
このような全県挙げての対策を紹介し、皆さんの地域のヒントになればと思います。
連載「糖尿病をめぐる診療科リレー」
糖尿病と皮膚疾患、特にDPP-4阻害薬と水疱性類天疱瘡の関連
氏家 英之(北海道大学病院)…42P
連載「糖尿病をめぐる診療科リレー」
糖尿病と皮膚疾患、特にDPP-4阻害薬と水疱性類天疱瘡の関連
糖尿病患者さんには、糖尿病性壊疽をはじめとした様々な皮膚疾患が生じます。近年、DPP-4 阻害薬を服用中の2 型糖尿病患者さんに、自己免疫性水疱症である水疱性類天疱瘡が生じた報告が国内外で増加しています。水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid; BP)は、表皮基底膜部にあるヘミデスモソームという細胞接着装置の構成蛋白であるBP180 に対する自己抗体によって、表皮真皮間の結合が低下するために、皮膚および粘膜に表皮下水疱が生じる自己免疫性水疱症です。水疱性類天疱瘡は本邦で最も頻度の高い自己免疫性水疱症で、70歳代以上の高齢者に好発し、中等症以上は厚生労働省指定難病に含まれます。
最近の研究により、DPP-4 阻害薬関連水疱性類天疱瘡は高齢者に好発することや、通常の水疱性類天疱瘡と比べて紅斑が乏しい「非炎症型」が多いこと、HLA- DQB1*03:01陽性例が多いことなどが明らかとなってきました。DPP-4 阻害薬服用患者さんの約0.09%に水疱性類天疱瘡が生じるという報告もあります。本症はまれな疾患ですが、見逃されやすく、重症化することもあるため、糖尿病治療に関わる内科医や医療スタッフに広く周知されるべき疾患です。DPP-4 阻害薬服用中の患者さんに複数のびらんや水疱が見られた場合には、本疾患を想起して速やかに対応する必要があります。
連載「糖尿病診療update」
周術期血糖管理におけるベッドサイド型人工膵臓の有用性
浦井 伸(兵庫県立姫路循環器病センター/神戸大学医学部附属病院)
橋本 尚子/大原 毅(兵庫県立姫路循環器病センター)…47P
連載「糖尿病診療update」
周術期血糖管理におけるベッドサイド型人工膵臓の有用性
入院中には、手術侵襲や飢餓など様々なストレスから、カテコラミン、グルカゴン、コルチゾール、成長ホルモンといったインスリン作用に拮抗するホルモンが分泌されます。インスリン拮抗ホルモンは、脂肪分解と蛋白質の異化を亢進しますが、インスリンが代償的に分泌される日常の状態では異化は抑制され、ブドウ糖の恒常性は維持されます。
しかし外科手術において、その日常のブドウ糖の恒常性を維持することはしばしば困難です。手術侵襲によってインスリン拮抗ホルモンが分泌され、インスリン抵抗性の増大を認める場合や糖尿病患者さんのようにインスリン分泌の不足が疑われる場合には、ブドウ糖の恒常性は維持できず、代謝が不安定になり、重篤な高血糖やケトン体生成の亢進を招きます。
入院中、特に周術期の血糖管理の目的は、単に血糖値を管理するだけでは不十分で、適切な栄養管理と十分なインスリン作用を確保することによって、このような代謝障害を改善することにあります。
症例クイズ
高齢者の自己注射指導のポイント
水ノ上 かおり(笠岡第一病院)…55P
運動がなかなか始められない患者さんの対応
伊藤 郁子/野口 瑛一(島根大学医学部附属病院)…57P
低血糖リスクの高い高齢者の対応
木梨 澄玲(横浜旭中央総合病院)…59P
インフォメーション
カンバセーションマップ講習会日程…61P
購読申込書…64P
「糖尿病には、あなたの正しい理解が必要です」…表3
次号予告/編集後記/購読確認票…62P
定期購読
DM Ensemble 定期購読申込フォーム