Last Update:2018年3月6日
2017年 Vol6. No.3(第26号)
2017年11月30日発行
特集

…8P
特集
血糖値をどう測るか
―SMBG の活用方法を探る
血糖自己測定(SMBG)が健康保険の適用を得てから本年で31年になります。この間、新たな治療薬が次々と登場し、糖尿病の薬物治療は著しい進歩を遂げてきました。それと同時にSMBGやCGMなどの血糖モニタリング技術も飛躍的な進歩を遂げてきました。
SMBG機器の進歩が患者さんに大きな恩恵をもたらしていることは疑いようのない事実でありますが、改めて日常診療を振り返ってみますと、SMBGが療養指導の中で十分に活用されているかといえば、決してそうではない場合も多く、まだまだその真価が発揮できていないのではないかとも思われます。CGMが使用可能となって以降は、血糖変動を可視化することの有用性が認識され、注目されていますが、それと同時にSMBGの有用性にも改めて目が向けられるようになってきていると感じています。そこで、本特集では、SMBGをどう療養に活かしていくのかという視点で、SMBGの有効活用について改めて考えてみたいと思います。
(岡山済生会総合病院 糖尿病センター長 中塔 辰明)
医師の立場から 患者教育のツールとしてSMBGを用いる
清水一紀(心臓病センター榊原病院)…9P
薬剤師の立場から
SMBGデータをどう読むか
小出景子(永寿総合病院)…12P
看護師の立場から
SMBGを療養支援に結びつける
―SMBGを活用したチームアプローチ―
佐藤真理子(岡山済生会総合病院)…15P
管理栄養士の立場から SMBGを食事指導に役立てる
幣憲一郎(京都大学医学部附属病院)…19P
理学療法士の立場から
SMBGを運動指導に役立てる
―SMBGを活用した運動療法の指導とリスク管理―
野村卓生(関西福祉科学大学) 前田貴之(高知大学医学部附属病院)…22P
臨床検査技師の立場から SMBGに求められる精度
―信頼できる値が血糖モニタリングを支える―
中川裕美(倉敷リバーサイド病院)…25P

血糖モニタリングの新たな展開:CGM、FGMの展望
渥美義仁(永寿総合病院)…28P
連載「地域医療の現場から」
糖尿病診療から地域医療へ、そして医学教育まで
谷口晋一(鳥取大学)…35P
連載「地域医療の現場から」
糖尿病診療から地域医療へ、そして医学教育まで
2型糖尿病は生活習慣病の1つであり、プライマリ・ケアのエッセンスが濃縮されている分野です。地域医療の現場では、患者さんの独居や交通の問題、認知症などが大きな障壁となっており、糖尿病管理も一筋縄ではいきません。透析予防や心血管イベント抑制という面で糖尿病は重要ですが、プライマリ・ケアの現場では、糖尿病患者の疾患マネジメントだけでなく、地域全体の患者フローや他の健康課題にも注目すべきと感じています。そして、医学生、医師、コメディカル全ての人材育成に尽くすことが地域の診療レベルアップに必要と考えます。
今回は、私が経験した中山間地での生活習慣病管理ならびに地域医療の取り組みについて、簡単に紹介したいと思います。さらに、鳥取県でのCDEL育成、鳥取県西部の糖尿病連携パス、サテライトセンターでの学生教育などにも触れていきます。
連載「糖尿病をめぐる診療科リレー」
循環器診療の中での糖尿病・耐糖能異常の意義
山下智也(神戸大学)他…40P
連載「糖尿病をめぐる診療科リレー」
循環器診療の中での糖尿病・耐糖能異常の意義
我が国の2型糖尿病患者数は増加傾向にあり、2015年の国民健康・栄養調査において、糖尿病が強く疑われる者の割合は、男性19.5%、女性9.2%である1)。糖尿病の合併症としての血管障害・動脈硬化性疾患は、死亡原因としても、生活の質を落とす理由としても重要である。糖尿病患者における冠動脈疾患の発症率は、非糖尿病者に比較して、約3倍増加するという報告が多い2,3)。
循環器内科で扱う心血管イベントの発症に関連する大血管障害に関しては、インスリン抵抗性が病態の主体である耐糖能異常の時期から始まり進展することがわかっており(耐糖能異常患者の冠動脈発症リスクは、正常者の1.6~1.9倍3))、早期からの介入治療の必要性が検証されている。一方、ハイリスク糖尿病患者に厳格な血糖コントロールを行えば低血糖の可能性が高くなり、それが心血管イベントを惹起して、かえって死亡率を上昇させたこともあり、糖尿病性の大血管障害を抑制する困難さを認識させられる4)。
そのほか、循環器内科で糖尿病を強く意識するのは、繰り返し治療が必要となる下肢閉塞性動脈硬化症、そして心収縮能は正常であるが、繰り返し心不全を発症する高齢・女性・肥満・高血圧・糖尿病患者に多い拡張不全を主体とした心不全( Heart Failure with Preserved Ejection Fraction:HFpEF)である。どちらも超高齢社会の日本において増加しており、予後が悪いという事実のみならず、医療費を含めた医療資源の消費原因としても大きな問題になることは自明であり、対策が求められる。
連載「糖尿病診療update」
高齢糖尿病患者の栄養管理
塚田芳枝(杏林大学医学部付属病院)…45P
連載「糖尿病診療update」
高齢糖尿病患者の栄養管理
日本は「超高齢社会」に突入した。今後ますます、高齢糖尿病患者が増加することが予測される。高齢者は身体や精神機能の個人差も大きく、また重症低血糖を起こしやすい。一度、重症低血糖を起こせば、認知機能の低下、転倒や骨折、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクにつながり、患者のADLおよびQOLの低下を招く要因となり得る。本来、糖尿病治療は、合併症の予防や進行を防止し、患者のQOLを維持することを目的としているはずである。しかし、高齢者に対して厳格な血糖を求め重症低血糖を来せば、結果的に本来の目的を損ないかねないリスクがあることを忘れてはならない。
2016年5月、日本糖尿病学会と日本老年医学会は、糖尿病の高齢者が目指すべき血糖管理目標値(HbA1c値)を発表した。これにより、65歳以上の高齢者に対し、よりきめ細かく対応することが可能となった。食事療法においても、現在は、この目標をよりどころとし患者へのケアが行われている。本稿では、上記の目標値を紹介すると共に高齢糖尿病患者の栄養管理の注意点について整理する。
連載⑳「糖尿病カンバセーション・マップ™」
トレーナートレーニングでコミュニケーション力を学ぶ
東山弘子(関西電力医学研究所)…50P
連載⑳「糖尿病カンバセーション・マップ™」
トレーナートレーニングでコミュニケーション力を学ぶ
糖尿病カンバセーション・マップ™(以下、カンバセーション・マップ)は、参加メンバー同士が「会話」を通して学ぶことを中心目標としています。この目標を達成するには、トレーナーが「患者中心主義」の理念を理解しており、メンバー達の会話を促進する技法を身に付けていることが求められます。トレーナートレーニングはファシリテーターとしてグループを担当するために必要なコミュニケーションと、治療的コミュニケーションの技法を学習し、人間関係力、コミュニケーション力を養い、ファシリテーターとしてのスキルアップを目指しています。
連載「症例クイズ」
「寝られない」と訴える糖尿病患者への対応
古川慎哉(愛媛大学)…55P
SGLT2阻害薬と療養支援
西村博之(陣内病院)…57P
末梢神経障害を持つ2型糖尿病患者の運動療法
笠原啓介(君津中央病院)…59P
インフォメーション
第6回日本糖尿病療養指導学術集会のご案内…1P
糖尿病療養指導カードシステム
講習会がかわります…63P
年間購読申込書…64P
「マールくん」LINE スタンプに登場!…表3
次号予告/編集後記…62P
定期購読
DM Ensemble 定期購読申込フォーム