2017年 Vol6. No.2(第25号)
2017年8月30日発行
特集

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特集
透析患者と糖尿病
近年、新たな糖尿病治療薬の開発や、糖尿病専門医や糖尿病療養指導士によるチーム医療の体制の充実など、糖尿病の合併症や透析の進展予防が注目されてきた。一方、透析期に移行した糖尿病患者は、保存期の糖尿病性腎症患者と比較して、生活管理や心理面の変化、また細小血管障害や大血管障害などの合併症の多さなど、患者に身近に接する医療スタッフの力量が試される。また、糖尿病外来から透析専門施設へ管理が移行するため、必ずしもそれぞれの医療現場の相互の理解は十分とは言えない。本特集では、透析期に移行した患者における糖尿病や合併症の管理、食事、服薬指導のポイント、口腔ケアとフレイル対策について、各分野の第一人者の方々に分かりやすく解説していただいた。
(東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科 脇 裕典)
透析患者の糖尿病管理 ―総論―
阿部雅紀(日本大学)…9P
足を救うために院内連携から病診連携へ
矢野晶子(東京西徳洲会病院)…14P
糖尿病透析患者の食事を考える
金澤良枝(東京家政学院大学)…18P
透析患者の糖尿病治療 ―薬剤師の視点―
隅野和美 古久保拓(白鷺病院)…21P
伝えたい!お口の健康管理のこと ―糖尿病透析患者の口腔管理―
吉岡昌美(徳島大学)…24P
透析患者に対する身体的フレイルを意識した疾患管理
松沢良太(北里大学病院)…27P
連載「地域医療の現場から」
ライフステージに即した医科歯科連携をめざして!
―歯科医師が終末期にかかわる訳とは?―
寺本浩平(寺本内科・歯科クリニック)…31P
連載「地域医療の現場から」
ライフステージに即した医科歯科連携をめざして!
―歯科医師が終末期にかかわる訳とは?―
当クリニック歯科では、外来患者さんへの歯科治療のみではなく、病院・施設・在宅への歯科訪問診療にも力点を置いてきました。すると、開院して5年経ちますが、現在では8割方が訪問歯科の患者さんになっています。これは、生活習慣病としての糖尿病や脂質異常症などが増悪した結果、脳血管疾患や心筋梗塞等で通院不可となることにも起因しています。そして、在宅療養中の要介護高齢者の口腔内は、もはや歯周病などといった域ではありません。医療従事者のみならず一目瞭然の惨状といえます。身体と同様に生じる口腔や咽頭への感覚・運動麻痺は、口腔のセルフケアのみならず自浄機能をも著しく低下させます。その結果、経口摂取時の誤嚥性肺炎(要介護高齢者の死因第1位)や、窒息(事故死第1位)といった重篤な摂食嚥下障害を引き起こし、社会問題となっています。
本稿では、糖尿病と歯周病の相関に基づく当院での取り組みと、歯科訪問診療の現場で遭遇する医科歯科連携の課題について触れたいと思います。
連載「糖尿病をめぐる診療科リレー」
糖尿病への心身医学的アプローチ
吉内一浩(東京大学医学部附属病院)…36P
連載「糖尿病をめぐる診療科リレー」
糖尿病への心身医学的アプローチ
近年、心療内科という診療科の名称は広く知られるようになったが、精神科との異同など、誤解が生じている場面を多々経験する。心療内科は、その名称の通り、内科の一部であり、「心理療法を併用する内科」のことであり、心療内科医は、心理療法にも習熟した内科医である。主たる診療対象は、「心身症」という「ストレスなどの心理社会的因子が、発症や経過に密接に関連する身体疾患」で、具体的には、ストレスなどが関係する過敏性腸症候群など、多くの内科疾患が含まれる。糖尿病も、食行動や運動などがストレスなどによる影響を強く受け、薬物療法だけでは十分なコントロールができない場合には、糖尿病(心身症)として、心療内科の専門的な診療対象となる。また、糖尿病と関連する心療内科領域の疾患としては、摂食障害とうつ病があるが、うつ病に関しては、本誌Vol.4 No.1の本企画「精神科」で紹介されており、本稿では、心身症としての糖尿病と、摂食障害の合併例に関して紹介する。
連載「糖尿病診療update」
糖尿病患者のがん ―福岡県糖尿病患者データベース研究より―
岩瀬正典(白十字病院)他…40P
連載「糖尿病診療update」
糖尿病患者のがん ―福岡県糖尿病患者データベース研究より―
糖尿病とがんの関連は広く知られているが、その詳細はまだ解明されていない。臨床の現場では日々の診療の中で糖尿病患者のがんを見落とさないことが大切である。そのためには糖尿病患者のがん発症について知る必要がある。日本糖尿病学会と日本癌学会の専門家による「糖尿病と癌に関する委員会」より2013年と2016年に委員会報告が出され、糖尿病とがんの相互関連についてがん発症メカニズムを含め詳細に検討されている1,2)。日本人における疫学調査として、8つのコホート研究のプール解析(男性16万人、女性18万人 平均追跡期間10年間)を行い1)、糖尿病の相対がんリスクは、全がんで1.19倍高く、部位別には肝臓がん1.97倍、膵臓がん1.85倍、大腸がん1.40倍と有意に増加していた。
高齢者糖尿病患者の血糖管理目標と多剤併用(ポリファーマシー)の問題点
辻本勉(兵庫県立尼崎総合医療センター)…44P
連載「糖尿病診療update」
高齢者糖尿病患者の血糖管理目標と多剤併用(ポリファーマシー)の問題点
わが国は65歳以上の人口が26.7%と超高齢社会となり、75歳以上も12.9%となっている。高齢者における糖尿病人口も増加し、70歳以上の男性の22.3%、女性の17.1%が糖尿病とされている(国民健康・栄養調査2014)。高齢者における重症低血糖は認知症の危険因子であることも報告されている。2016年5月に日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会から「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」が発表され、特に、重症低血糖が危惧される薬剤(インスリン、スルホニル尿素(SU)薬など)を使用している患者では、目標下限値が示された。また、高齢者糖尿病患者においては複数の疾患を合併することが多く、そのため服薬する薬剤数が多くなるために、飲み忘れ、飲み間違いの発生率増加に関連した薬物有害事象の増加が問題視されている。
話題の新薬と現在開発中の治験薬について
山田徹(新潟市民病院)…48P
連載「糖尿病診療update」
話題の新薬と現在開発中の治験薬について
厚生労働省が3年ごとに実施している「患者調査の概況」の2014年調査によると、糖尿病の総患者数(継続的な治療を受けていると推測される患者数)は、316万6000人で、前回の調査よりも46万人以上増加した。性別では、男性176万8000人、女性140万1000人*で、前回の調査に比べて男性で約30万人、女性で約20万人の増加となった1)。
また2016年度厚生労働白書の「健康日本21(第2次)」のなかに糖尿病を含む生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底が謳われており2)、糖尿病の治療はこれからの日本と切っても切れない状況にある。
今回は最近発売された①DPP-4阻害薬2種類、②GLP-1受容体作動薬2種類、③持効型溶解インスリンアナログ製剤と患者サポートプログラム、④現在開発中の薬、以上4点について概要を述べたい。
*総患者数は、算出方法により男女の合計総数と合わない場合がある。
連載⑲「糖尿病カンバセーション・マップ™」
糖尿病カンバセーション・マップ教育制度の変更点について
―トレーナー制度の集約と変更―
大部正代(中村学園大学)…55P
連載⑲「糖尿病カンバセーション・マップ™」
糖尿病カンバセーション・マップ教育制度の変更点について
―トレーナー制度の集約と変更―
本誌2016年8月30日発行のVol.5 No.2では、糖尿病カンバセーション・マップ™(以下、マップ)の新教育制度についてご案内しましたが、今回トレーナー制度を一部集約し変更しましたので、お知らせいたします。糖尿病カンバセーション・マップ委員会の役割、各トレーナーの役割、資格取得方法、更新条件など、詳細に記しております。マップはファシリテーターの力量次第でその場の雰囲気が変わります。常にファシリテーターには様々な能力とスキルの維持が求められることになりますので、フォローアップ・トレーニングやトレーナートレーニングの受講が必要となります。医療従事者の皆さんに本制度をご理解の上、積極的にマップトレーニングを受講いただき、ファシリテーターやトレーナーの資格を生かし各地域でマップの普及活動を通して、患者さん支援の推進をお願いします。
連載「症例クイズ」
SAP療法導入時の説明(注意点)について
水野賀夫(福井県済生会病院)…59P
インフォメーション
第6回日本糖尿病療養指導学術集会のご案内…1P
糖尿病カンバセーション・マップと糖尿病療養指導カードシステム 2017年講習会のお知らせ…58P
日本糖尿病協会 研究助成応募要項…63P
年間購読申込書…64P
「マールくん」LINE スタンプに登場!…表3
次号予告/編集後記…62P
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