2017年 Vol6. No.1(第24号)
2017年5月30日発行
特集

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特集
心に残る楽しい糖尿病教室・教育
日本の糖尿病教育は、主にCDEチームによる教育入院の形で広がってきた。しかし、本当に「心に残る楽しい」ものになっているだろうか。心に残る楽しいものにする秘薬を探してもらった。
まず、チーム全体のwelcomeの心と行動変容につながる脳科学に基づく前向きのサポート。患者中心の個別化と自主的参加プログラムのコーディネイト。CGMやポンプ外来、電子カルテによるリアルタイムカンファレンスなどフレキシブルで近代的なチーム作り。地域全体での継続研修と療養指導の心の育成。広い視野からみた社会戦略と組織化・標準化。その結果、糖尿病教育への参加が患者の主体的生き方を引き出し、人生が豊かで楽しいものに変わっていくきっかけになることを祈りたい。
(聖マリア病院 糖尿病センター 布井清秀)
地域医療支援病院における糖尿病教育の変遷とこれから
布井清秀(聖マリア病院)…9P
看護の視点からチーム医療を考える
森加苗愛(大分県立看護科学大学)…12P
教室を盛り上げる工夫とツール ~データの見える化とゆるキャラ~
野原栄(製鉄記念八幡病院)…15P
糖尿病教育の標準化と組織化 ~岡山県の取り組み~
利根淳仁 四方賢一(岡山大学病院)…21P

糖尿病者への心理社会的アプローチについて
大家聡樹(北野病院)…25P
座談会 10年後の糖尿病教室
―心に残る楽しい糖尿病教室・教育―
布井清秀(聖マリア病院) 松本一成(佐世保中央病院) 鎌田哲郎(今村病院) 野原栄(製鉄記念八幡病院) 中尾友美(聖マリア病院)…27P
座談会 10年後の糖尿病教室
―心に残る楽しい糖尿病教室・教育―
地域および日本糖尿病療養指導士が誕生して20年が経過しようとしています。この間、体系的な研修を受けた糖尿病療養指導士(Certified Diabetes Educator:CDE)を中心に、多職種チームによる糖尿病教育が主に糖尿病教室の形で開かれるようになりました。療養指導の進め方も深化し、集団指導だけでなく、個々の病態や自己管理能力、心理社会的側面などに基づく個別指導や患者さん同士の交流など、「心に残る糖尿病教室」を目指したアプローチが始まっています。そこで、こうした取り組みが患者さんにどのような恩恵をもたらしているのか、10年後にはどのような変化が期待できるのか、糖尿病教室・教育に造詣の深い先生方にお話しいただきました。
連載「地域医療の現場から」
ラオス国をモデルに考える途上国での糖尿病診療と地域連携の構築
帖佐理子(若松記念病院)…35P
連載「地域医療の現場から」
ラオス国をモデルに考える途上国での糖尿病診療と地域連携の構築
糖尿病の診療・医療連携は、先進国では近年目覚ましく進歩しましたが、医療資源に乏しい途上国には当てはまらない状況です。国際糖尿病連合(International Diabetes Federation:IDF)の報告によれば、2015年時点では世界の成人(20~79歳)糖尿病人口は4億1500万人であり、死亡は500万人に達しています。そしてその75%は中低所得国に住んでいます。また、未診断症例は世界で46.5%であり、アフリカ、南東アジア、西太平洋地域など途上国の多い地域では、未診断率は52%から67%と言われています。これらは成人に多い2型の統計ですが、小児に多い1型については更に情報が不足している状況です。今後人口増加や高齢化が進む途上国での糖尿病対策は、治療費を贖えない低所得者人口が膨大なために、大きな健康問題と考えます。
私は、NPO法人「じゃっど」のメンバーとして、長年東南アジアの後発開発途上国であるラオスに学校保健で関わってきました。経済成長を遂げつつあるとはいえ、健康にかかわる行政・社会体制はまだまだ確立されていません。今回、ラオスをモデルに、脆弱な保健システムの中での糖尿病の診療と地域連携を考えてみましたので、報告いたします。
連載「糖尿病をめぐる診療科リレー」
形成外科とフットケア
雑賀厚臣(聖マリア病院)…42P
連載「糖尿病をめぐる診療科リレー」
形成外科とフットケア
糖尿病は、形成外科においては、主に足病変の患者として診察する機会が多い。当院形成外科全入院患者における糖尿病の比率は、新規入院779人に対して127人と、約16%を占める。疾患別には、足病変などの難治性潰瘍が90%と大半を占める。糖尿病患者の足病変については、難治性であることから、平均在院日数を押し上げる要因にもなっているが、当院のような急性期病院では在院日数の増加は死活問題でもある。最近では後述する通り可能な限り外来で診るようにしており、さらに予防的ケアに力を入れている。外来では胼胝削りや爪切り、靴のフィッティングに加え、軽いデブリドマンや切開排膿まで、ケアの種類も多様で、複数の職種での診察が望ましいことから、専門の外来での対応が望ましいと考えている。2015年から当院では、主に糖尿病患者のフットケアに特化した他職種参加型のフットケア外来を行っている。
連載「糖尿病診療update」
最新の高齢者における栄養管理
澤田実佳 ほか(東京大学医学部附属病院)…46P
連載「糖尿病診療update」
最新の高齢者における栄養管理
我が国は超高齢社会に突入し、後期高齢者の割合がさらに増加することが医療・介護分野を超え社会的な問題となっている。高齢者は複数の疾病罹患のみならず老年症候群をはじめとした種々の問題を抱えており、その個人差も大きく、成人とは異なった栄養管理が必要である。本稿では高齢者におけるフレイル、サルコペニア、低栄養などの栄養問題に焦点を当て最善の栄養ケアを考えてみたい。
連載「糖尿病療養指導カードシステム」
糖尿病療養指導カードシステム 各論1
道口佐多子 遅野井健(那珂記念病院)…52P
連載「糖尿病療養指導カードシステム」
糖尿病療養指導カードシステム 各論1
前回に引き続き、糖尿病療養指導カードシステム(以下、本システム)についての解説をします。前回は、本システム開発の経緯およびシステム構成について大まかに紹介しました。そこで、今回と次回は本システムを実際に使用して指導介入を行った症例の紹介を通して、運用法を具体的に解説します。
連載⑱「糖尿病カンバセーション・マップ™」
療養指導技術のブラッシュアップ
~フォローアップトレーニング~
下野大(二田哲博クリニック姪浜)…56P
連載⑱「糖尿病カンバセーション・マップ™」
療養指導技術のブラッシュアップ
~フォローアップトレーニング~
糖尿病療養指導にはさまざまな資材が使用されています。その中でも、糖尿病連携手帳第3版にも紹介されている「糖尿病カンバセーション・マップ™(以下、マップ)」は世界各国に普及しており、100カ国以上の国々で糖尿病療養指導に用いられています。しかし、どんなによい道具でも使い方が適切でなければ十分な効果は得られません。日本では、日本糖尿病協会が2009年からマップの普及事業を展開しており、マップを提供するだけでなくその使い方のトレーニングを行っています。2016年度にはトレーニング制度を新しいものに変更し教育制度を充実させました。皆様にも、マップやその新しいトレーニング制度について、より理解を深めていただきたいと思います。また、この新しいトレーニング制度にもとづき、フォローアップトレーニングが2017年2月19日に京都で実施されましたので、本稿ではそのご紹介をします。
インフォメーション
第5回日本糖尿病療養指導学術集会のご案内…41P
糖尿病カンバセーション・マップと糖尿病療養指導カード 2017年度開催講習会のお知らせ…51P
年間購読申込書…64P
糖尿病療養指導鈴木万平賞 募集のお知らせ…表3
次号予告/編集後記…62P
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