2016年 Vol4. No.4(第19号)
2016年2月20日発行
特集
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特集
糖尿病とがん
糖尿病患者の死因第1 位は悪性新生物であり、“糖尿病とがん”の臨床での関わりは糖尿病診療の一部と言えるほど日常的である。私自身の糖尿病外来でも初診時にがんが併存する患者、通院中にがんを発症する患者を非常に多く経験する。“糖尿病とがん”の併存状態は患者ごとに状況が大きく異なり、さらにがんの治療状況によって糖尿病療養の方針も大きく変化する。今回の特集では“糖尿病とがん”の診療・療養指導の経験が豊富なエキスパートに、日常診療に生きる知識やノウハウを解説いただいた。
(大垣市民病院 糖尿病・腎臓内科 柴田大河)
迫り来る、糖尿病の新たな合併症~がん~
野見山崇(福岡大学)…7P
ここがポイント! がん患者の糖尿病をどう診るか
大橋健(国立がん研究センター中央病院)…10P
担がん状態の糖尿病患者の療養指導
中島久美子(名古屋大学医学部附属病院)…14P
抗がん薬治療と糖尿病 糖尿病治療薬のがん発症リスク軽減
中島啓二 宇佐美英績(大垣市民病院)…17P
がんと糖尿病の食事療法
鈴木富夫(名古屋文理大学)…20P
担がん状態の糖尿病患者の検査結果で気を付ける事
平井信弘(愛知医科大学病院)…22P
担がん患者の糖尿病診療の患者エピソード
戸崎貴博(糖尿病・内分泌内科クリニックTOSAKI )…26P
がん患者を含む様々な疾患管理に有益な口腔ケア
梅村昌宏(大垣市民病院)…27P
連載「地域医療の現場から」
Change and challenge for the future
未来に向けての変革と挑戦
金子至寿佳(高槻赤十字病院)…31P
連載「地域医療の現場から」
未来に向けての変革と挑戦
高槻市医師会主導型地域連携パスは、当時の医師会長甲斐敏晴先生の発案により医師会主導で始まりました。診療所と病院が役割分担し地域で医療を提供するという、今から20年ほど前からの甲斐元医師会長の発想に基づくものでした。当地域は以前より医師会の働きかけで地域連携診療は盛んでしたが、加えて10年以上前から甲斐元医師会長は、地域連携診療をパスとして統一することで施設間の差をなくし、一病院完結型ではなく効率的かつ効果的に地域で医療を提供する地域完結型診療体制を発展させることを目指しました。地域連携パスの構築が進むにつれ、地域で医療を提供する構想は、将来の市民の高齢化と高齢化に基づいて増える疾患に対処する1つの問題解決の手段として重要であることがわかってきました。こうして全国に先がけて2007年から糖尿病、脳梗塞、虚血性心疾患そして大腿骨頸部骨折の4疾患について高槻医師会主導型地域連携パスが開始されました。この連携パスが開始されてまもなく甲斐先生は胃がんを患いましたが、我々パス委員には知らされることなく医師会の仕事を退かれ2013年に永眠されました。当パスについて『DM Ensemble』に掲載する機会をいただきましたことを、甲斐敏晴元医師会長に謹んでご報告申し上げます。
連載「糖尿病をめぐる診療科リレー」
糖尿病と泌尿器科領域との関連
~神経因性膀胱と勃起障害~
首藤直樹(NTT東日本関東病院)…38P
連載「糖尿病をめぐる診療科リレー」
糖尿病と泌尿器科領域との関連
~神経因性膀胱と勃起障害~
「糖尿病と泌尿器科領域で関連することについて」と聞くと、我々泌尿器科医は、神経因性膀胱、尿路感染症、勃起障害(erectile dysfunction:ED)、糖尿病性腎症といった疾患をまず思い浮かべる。今回は泌尿器科の専門性が高い神経因性膀胱、勃起障害を取り上げてみたい。
神経因性膀胱について、皆さんはご存じだろうか? 我々泌尿器科にとっては日常診療で用いることの多い病名であるが、病態は複雑で、泌尿器科医でも苦手とする医師が多い疾患である。簡単に言ってしまうと、排尿を司る神経経路がやられ、うまく排尿ができていない状態である。糖尿病の場合、腎症、網膜症、末梢神経障害という3大合併症があり、そのうちの末梢神経障害により神経因性膀胱という病態を呈する。尿意を感じない、排尿するも尿を出し切る力が落ちており、残尿が多量、時に尿閉になるなどの排尿症状が主症状である。勃起障害は、たかが勃起障害、されど勃起障害である。80歳近くの方でも、実臨床で相談を受ける機会は意外と多い。本邦での疫学調査でも1130万人もの男性がEDを発症していると報告され、決して珍しい疾患ではない。EDのリスクファクターとして加齢とともに生活習慣病が挙げられ、今やメタボリックシンドロームの1つとして認識され、糖尿病はEDを引き起こす生活習慣病の代表である。
連載⑭「糖尿病カンバセーション・マップTM」
糖尿病教室で「糖尿病カンバセーション・マップ™」を体験して
~患者さんとファシリテーターそれぞれの反応~
横田香世(関西電力病院)…43P
連載⑭「糖尿病カンバセーション・マップTM」
糖尿病教室で「糖尿病カンバセーション・マップ™」を体験して
~患者さんとファシリテーターそれぞれの反応~
当院では、糖尿病患者会の会員や入院中の患者さん、外来通院中の患者さん・家族を対象に糖尿病教室を行っています。毎月、看護師、理学療法士、薬剤師、管理栄養士、検査技師、医師が順番に担当し、患者さん・家族が楽しい、参加してよかったと感じてもらえるような企画を考え、協力し合いながら糖尿病教室を開催しています。2015年10月の糖尿病教室は、看護師が中心となり、「糖尿病カンバセーション・マップ™」(以下カンバセーション・マップ)を用いて、患者さん同士がお互いの体験を語り合い、学び合う場を作ることを目的に開催しました。終了後にカンバセーション・マップに参加してどうであったかのアンケート調査を行ったので、その内容について報告します。加えて、カンバセーション・マップのファシリテーターを担ったスタッフの体験についてのアンケート結果を報告します。
連載「糖尿病診療update」
糖尿病神経障害の日常診療
姫野龍仁(愛知医科大学)…46P
連載「糖尿病診療update」
糖尿病神経障害の日常診療
本稿のお題を頂いて、本誌Vol. 3 No. 4 に掲載された青森県立中央病院の馬場正之先生の書かれたものを読み返してみたところ、「糖尿病神経障害の基礎」と銘打たれておりながら、ほぼ日常臨床における身体所見・診断のエッセンスが凝縮されており、筆者が改めて書き足すことが残されていないことに気付いた。そこで、本稿では、糖尿病神経障害の病態・診断に関わる堅い話にはあまり触れずに、当科において実際に糖尿病内科医が行っている糖尿病神経障害の日常診療の現状と課題を報告する。
高齢者糖尿病患者の血糖管理 ―薬物療法のポイント―
三木育子 室井延之(赤穂市民病院)…50P
連載「糖尿病診療update」
高齢者糖尿病患者の血糖管理 ―薬物療法のポイント―
我が国は高齢社会を迎えており、2014年の総務省推計では65歳以上の高齢者は3000万人を超え、全人口の27%を占めている。また、2012年の国民健康調査から糖尿病を強く疑われる、もしくは糖尿病の可能性を否定できない人はさらに増加しており、特に高齢者糖尿病患者の増加が顕著である1 )。高齢者糖尿病はインスリン抵抗性の増大や種々の合併症の併存など、様々な病態上の特徴が見られ、加えて身体的・精神的背景、家族関係など社会的問題もある。特に認知機能、日常生活動作(ADL)、栄養状態、多剤併用、アドヒアランスの維持、低血糖やシックデイ対策等が問題となる。高齢者糖尿病患者の血糖コントロール目標を達成するためには、個々の患者の病態、背景、生活能力を評価し、最適な薬物療法の選択が必要である。
連載「症例クイズ」
腎合併症の進行予防指導はなぜ早期から?
窪岡由佑子(兵庫医科大学病院)…53P
インスリン療法中の低血糖
徳丸季聡(金沢大学附属病院)…55P
ダイエットに適した運動方法
出口憲市(徳島大学病院)…57P
インフォメーション
第4回日本糖尿病療養指導学術集会のお知らせ…1P
糖尿病療養指導カードキットの使い方…60P
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日本糖尿病協会糖尿病療養グッズのご案内…64P
次号予告/編集後記…62P
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