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緊急情報・重要な情報(2014/06/13)

SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation

2014年 6月13日


 我が国でSGLT2阻害薬が4月17日発売され、続いて5月23日に別のSGLT2阻害薬3剤が発売された。本薬剤は新しい作用機序を有する2型糖尿病薬であるが、治験の際に低血糖など糖尿病薬に共通する副作用に加えて、尿路・性器感染症など本薬剤に特徴的な副作用が認められていた。加えて、本薬が広汎で複雑な代謝や循環への影響をきたしうることから、発売前から重篤なものを含む多様な副作用発症への懸念が持たれていた。このたび、発売開始から1ヶ月間の副作用報告を受け、因果関係など情報に不十分な点はあるものの、重篤な副作用の懸念のうち、残念ながらいくつかが現実化したことを踏まえ、「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」を発足させ、検討を行った。


 このたび本委員会が入手した資料によれば、予想された副作用である尿路・性器感染症に加え、重症低血糖、ケトアシドーシス、脳梗塞、全身性皮疹などの重篤な副作用が発症している。この中には、現時点では必ずしも因果関係が明らかでないものも含まれているが、多くが当初より懸念された副作用であることから、本委員会としては、今の時点でこれらの副作用情報を広く共有することにより、今後、副作用のさらなる拡大を未然に防止することが必要と考え以下のRecommendationおよび具体的副作用事例とその対策を報告する。


Recommendation


副作用の事例と対策

重症低血糖

24例の低血糖が報告され、うち4例は重症低血糖であった。多数の糖尿病薬を使用している患者に更に追加されている場合が多く、併用薬はSU薬、インスリンに加えて、他の作用機序の薬剤も含まれている。SGLT2阻害薬の添付文書にあるように、他の糖尿病用薬(特に、スルホニルウレア剤、速効型インスリン分泌促進剤又はインスリン製剤)を投与中の患者へのSGLT2阻害薬の追加は低血糖を起こすおそれがある。これらの製剤とSGLT2阻害薬を併用する場合には、低血糖のリスクを軽減するため、あらかじめスルホニルウレア剤(SU薬)、速効型インスリン分泌促進剤又はインスリン製剤の減量を検討することが必要である。特に、SU薬にSGLT2阻害薬を併用する場合には、DPP-4 阻害薬の場合に準じて、以下の通りSU薬の減量を検討することが必要である。

・グリメピリド2mg/日を超えて使用している患者は2mg/日以下に減じる
・グリベンクラミド1.25mg/日を超えて使用している患者は1.25mg/日以下に減じる
・グリクラジド40mg/日を超えて使用している患者は40mg/日以下に減じる

なお、SGLT2阻害薬とインスリン製剤、GLP-1受容体作動薬との併用における有効性及び安全性は治験では検討されていないことも留意しなければならない。


ケトアシドーシス

1例のケトアシドーシスが報告された。本例では、極端な糖質制限が行われていた。SGLT2阻害薬の添付文書にあるように、血糖コントロールが良好であっても血中ケトン体増加が認められることがある。SGLT2阻害薬投与に際しては、インスリン分泌能が低下している症例への投与ではケトアシドーシスの発現に厳重な注意が必要である。同時に、栄養不良状態、飢餓状態の患者や極端な糖質制限を行っている患者に対するSGLT2阻害薬投与はケトアシドーシスを発現させうることに一層の注意が必要である。


脳梗塞

3例の脳梗塞が報告された。2例は重篤、1例は非重篤とされ、年齢は50代から80代である。SGLT2阻害薬の添付文書には、体液量が減少することがあるので、適度な水分補給を行うよう指導すること、体液量減少を起こしやすい患者では、脱水や脳梗塞を含む血栓・塞栓症等の発現に注意することとしている。脱水が脳梗塞発現に至りうることに改めて注意を喚起し、高齢者や利尿剤併用患者等の体液量減少を起こしやすい患者に対するSGLT2阻害薬投与は、十分な理由がある場合のみとし、特に投与の初期には体液量減少に対する十分な観察と適切な水分補給を必ず行い、投与中はその注意を継続する。また、脱水がビグアナイド薬による乳酸アシドーシスの重大な危険因子であることに鑑み、ビグアナイド薬使用患者にSGLT2阻害薬を併用する場合には、脱水と乳酸アシドーシスに対する十分な注意を払う必要がある(「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」http://www.jds.or.jp/)。


全身性皮疹・紅斑

全身性皮疹が7例報告されうち6例は重篤であり、また全身紅斑あるいは紅斑性皮疹が4例報告されうち3例が重篤であった。SGLT2阻害薬投与後1日目から12日目の間に発症している。これらの重篤な皮膚障害は、治験時に殆ど認められていなかったものであるが、SGLT2阻害薬投与との因果関係が疑われ、今後SGLT2阻害薬投与に際しては十分な注意が必要である。尚、この全身性皮疹・紅斑が最初に発売されたSGLT2阻害薬に特異的かこのクラスの薬剤に共通の副作用であるか、現時点では不明であり、今後注意深い観察が必要である。


以上、SGLT2阻害薬が発売されてから約1か月間の副作用情報を踏まえ、その使用にあたっての重要な注意喚起を行った。本薬剤は適応を十分に考慮した上で、添付文書に示されている安全性情報に十分な注意を払い、また本Recommendationを十分に踏まえて、特に安全性を最優先して適正使用されるべき薬剤である。発売日から3ヵ月間に本剤を服用した高齢者(65歳以上)では全例の特定使用成績調査が定められており、是非ともそれに則った使用が推奨される。尚、本委員会は継続的にSGLT2阻害薬の安全性情報を収集・分析し、必要は注意喚起を行っていく。


「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」

京都大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科学 稲垣暢也
東京大学大学院医学系研究科 分子糖尿病科学 植木浩二郎
川崎医科大学 総合内科学1 加来浩平
東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科 門脇孝
関西電力病院 清野裕
旭川医科大学 内科学講座 病態代謝内科学分野 羽田勝計


以上


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